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2022.01.28 08:38

燃油高騰が高知県の産業直撃 コロナに追い打ち「自分たちではどうしようも…」

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 ガソリンなど燃油価格の高騰が高知県内の産業を直撃している。新型コロナウイルス禍で苦しい経営をさらに圧迫しており、事業者からは「売り上げ減に経費増でダブルパンチ」「自分たちではどうしようもない」と切実な声が上がる。

 県内の24日時点のレギュラーガソリン1リットルの平均小売価格は、17日比で1円10銭上がり176円80銭に。全国で4番目の高さで、昨年10月に7年ぶりに170円台に入ってからも上昇が続き、重油や軽油も連動している。

農家「痛い」
 「ヒーターを止めるわけにはいかず、本当に痛い。コロナ下で売り上げも2~3割減。ダブルパンチです」

 高知市春野町仁ノのハウス2棟でキュウリを育てる越智史雄さん(55)が嘆く。11~3月の夜間にヒーターをたき、月5千~6千リットルの重油を使う。今の重油価格は1リットル109円まで上昇。80円台だった前年より月10万円ほど負担が増している。

キュウリのハウスを加温している越智史雄さん。重油高騰でコストは月10万円増えたという(高知市春野町仁ノ)

キュウリのハウスを加温している越智史雄さん。重油高騰でコストは月10万円増えたという(高知市春野町仁ノ)

 土佐市宇佐町宇佐の養鰻(ようまん)業、川村寛二さん(59)も、12~3月はウナギが冬眠しないよう、地下水を30度までボイラーで温める。重油高騰で毎月の経費は昨年より300万円増の1千万円に。「成長が少し遅れる恐れもあるが、水温を下げて重油を減らしている」という。

 今年はシラスウナギも不漁で、仕入れ価格は昨年の2倍。餌代も上がっている。「今夏はウナギの値段も2、3割上がりそうだ」と話した。

 例年この時期、近海カツオ船は漁場探索を兼ねて「一番船」が出るころだが、今年は様子見の状態。高知かつお漁協(高知市)によると「燃油高で各船とも出漁を遅らせている。漁のスタートは2月中旬から3月になりそう」という。

 コロナ禍で魚価は低迷中。跳ね上がった燃油価格が小規模漁業者の気力を奪う。1人でカツオなどを釣る幡多郡黒潮町佐賀の奥田牧男さん(56)は「油代を取り返せるかの心配ばかり。出漁をためらっている」とこぼした。

影響もろに
 高知―東京間の高速バスを主要な収益源とする高知駅前観光(高知市)によると、昨年12月の軽油価格は1年半前の1・5倍まで高騰し、社全体の燃料費は月に100万円増えた。梅原章利社長(47)は「長距離だけに燃料費の影響をもろに受ける。コロナ下の乗客減も原油高も自分たちはやりようがない」と困り顔。

 バス196台を抱えるとさでん交通(同)は「この1年間で数千万円の負担増」だとし、県中部の運送会社も「2021年度は油が上がり続け、物流業界は赤字の会社も多そう。荷主もコロナの影響を受けているので運賃を簡単に上げられない」と嘆いた。

 衣類を洗う溶剤からボイラー、包装資材まで石油関連製品を使うクリーニング業界も影響をもろにかぶる。

 県クリーニング生活衛生同業組合の木村浩二理事長は「コロナ禍の売り上げ不振で、廃業や規模縮小する店が出てきている。灯油や重油が上がり、どこも経営が逼迫(ひっぱく)している」と訴える。

値下げは…
 政府は27日、燃油価格の急騰抑制策を発動した。石油元売り会社に補助金を出して卸値上昇を抑え、ガソリンスタンドなどの小売価格に波及させたい考えだ。

 県内8カ所でスタンドを営む男性(54)は25日、レギュラーの価格を1リットル当たり2円上げ178円とした。抑制策を受けて来週は価格を維持するというが、「施策は小売価格の上昇を抑えるもので、下げるためではない」と強調する。

 「小売店は昨年12月末から急激に上がった仕入れ値を、販売価格に十分に転嫁できていない。今回の抑制策がなければさらに2円ほど値上げするつもりだった。消費者は小売価格の低下を期待していると思うが、理解してほしい」と説明した。

 土佐清水市など一部地域では、既に180円を超えたスタンドもある。

 高知市のガソリンスタンドに給油しに来た女性(43)は「何もかも値上げ続きで、うんざり。せめてガソリンの値上げが止まってくれたら助かるけど…」と話した。(本紙取材班)

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