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2022.01.28 08:00

【春闘スタート】暮らしを守る賃上げを

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 2022年春闘が事実上、スタートした。
 岸田文雄首相は春闘に先立ち、経済界に対して賃金引き上げへの期待を表明している。首相が掲げる「新しい資本主義」は成長と分配の好循環実現をうたう。賃上げによる分配機能の強化は、その実現に向けた鍵を握るといってよい。
 30年に及ぶ賃金の伸び悩みは、日本経済の停滞と軌を一にする。国内労働者の実質賃金は近年、経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国の平均を大きく下回っている状況にある。
 賃金の抑制傾向が続いたことで消費はしぼみ、業績が振るわなくなった企業はさらに人件費や技術開発など将来への投資を抑制する。こうした悪循環が国際的な競争力を低迷させる要因と指摘されている。
 働き手への適正な分配が行われてきたのか。連合はこうした疑問から、基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)を月給2%、定期昇給(定昇)分2%の計4%程度の賃上げを求めた。
 首相は昨年11月、業績が新型コロナウイルス禍以前の水準に回復した企業には「3%を超える賃上げを期待する」と述べた。積極的に応じた企業は、税制などで優遇する政策を打ち出している。経団連は首相と歩調を合わせる姿勢を鮮明にし、賃上げに前向きな姿勢を示している。
 ここに来て、賃上げの果たす役割の重要性は増している。賃金が伸び悩む一方、生活を取り巻く環境は悪化しつつある。円安や原油高による「輸入インフレ」は食料品から電気代まであらゆる分野を圧迫している。日銀は、22年度の消費者物価の上昇率見通しを前年度比0・9%から1・1%に引き上げた。
 当面、値上がり傾向は続くとみられており、このままでは景気回復や賃上げを伴わない「悪い物価上昇」が家計を直撃してしまう。賃上げは国民の暮らしを守る意味合いを持ってくる。
 コロナ禍で日本経済は大きな打撃を受け、ここ数年の春闘は賃上げ率の低下傾向が続き、21年は8年ぶりに2%を割った。
 製造業などで持ち直しが進んでいるものの、業種や規模によって業績にばらつきがある状況だ。変異株「オミクロン株」の急拡大もあり、飲食業やサービス業を中心に業績の回復が遅れている企業は多い。現実的には、好調な企業が賃上げを主導する流れをつくり出せるかが焦点になる。
 首相は今後、成長・分配戦略の具体策を示し、毎年度の工程表を作成するとしている。賃上げは戦略の要であり、政治の掛け声倒れで進まなかった課題でもある。
 企業の賃上げに踏み出す意欲を刺激するような、実効性のある政策誘導が求められる。業種や規模によって異なる実情に応じた、きめ細やかな優遇策が欠かせないだろう。
 「分配」を多くの国民が実感できるかどうか。まずは賃上げしやすい環境づくりを急ぐ必要がある。

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