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2022.01.27 00:04

【K+】vol.181(2022年1月27日発行)

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K+ vol.181 
2022年1月27日(木) 発行

CONTENTS
・はじまりエッセイ letter183 中西なちお
・K+インタビュー 話をしてもいいですか vol.183 西森梢
・Information
・特集 発酵と暮らす|丸共味噌醤油醸造場
・フランスからの土佐人便り BONCOIN IN PARIS✉29
・高知を元気に! うまいもの熱伝 volume.55|入河内大根@安芸市
・気の向くままに お気軽 山歩き ;35
・日々、雑感 ある日 vol.19
・小島喜和 心ふるえる土佐の日々 第二十八回
・シンディー・ポーの迷宮星占術
・+BOOK REVIEW
・今月のプレゼント

河上展儀=表紙写真


特集
発酵と暮らす
丸共味噌醤油醸造場

仙頭杏美=取材 河上展儀=写真

地域の味を届け続ける老舗味噌醤油醸造場。
4代目夫婦は、日本の発酵食の尊さを伝えて。




日本伝統の味を作り、届ける 

 マルキョー醤油(しょうゆ)の愛称で親しまれ、広く高幡地域で使われる須崎市の丸共味噌醤油醸造場の醤油。漁業が盛んな土地らしく、地元漁師から鰹に合うと愛用されています。山側の住人は穏やかな甘味の、海側の住人はそれよりも甘味のある醤油を好むなど、人それぞれに好みの味があります。また、天然醸造で造る味噌も長年愛される味。マルキョー醤油の商品は、地域に欠かせない味となっています。
 その醸造場を切り盛りするのが、4代目の竹中栄嗣さんと妻の佳生子さんです。「地元の小学校の出前授業で、味噌汁を朝食べてきた人を聞いたら1人もいなかったのがショックで。味噌造り教室を開いて、もっと味噌を身近にしたいと考えているんです。その根本には日本伝統の発酵食を食べてほしいという思いがあります」と栄嗣さん。
 こうじ菌由来の発酵食である味噌や醤油、納豆などが、今、健康食として見直されています。2人も毎日味噌を取り入れることで体調が整う実感があり、家族で毎日味噌汁を食べていると言います。家庭での消費が減り、地域に昔あった味噌屋や醤油屋も姿を消す中、新たな展開に思いを巡らせながら、夫婦は発酵食の魅力を伝えようと動きだしています。

創業当時は、自社で全工程を行っていた醤油造り。その際に使っていた木たるも残ります

創業当時は、自社で全工程を行っていた醤油造り。その際に使っていた木たるも残ります





地域に愛される味を守って

 元々は、地元の名士が出資して大正時代に創業した丸共味噌醤油醸造場。それを佳生子さんの祖父が会社にして親戚夫婦が営んでいました。しかし、跡取りがおらず、廃業の危機に。後を継いだのが、親戚筋だった佳生子さんの父でした。地域の人の「やめないでほしい」という声に背中を押されて。
 当時、高校生だった佳生子さんは、進学で上京。その後、横浜の地ビール会社で働き始め、そこで、同僚として土佐清水市出身の栄嗣さんと出会います。「ビールが好きで懸命に働いていました。でも、次第に地元や日本の発酵など、自分のルーツが気になり始めて。父からも戻ってほしいと言われ、帰郷を決めました」と佳生子さん。
 同じくビール好きだった栄嗣さんも、会社で忙しく働きます。「仕事は好きでしたが、職場に決定権がないもどかしさを感じていた時期で。妻の実家の家業は発酵や食に関わる仕事だったので、やってみたいと思いました」。2005(平成17)年に結婚し、共に働くように。3年後、栄嗣さんは、佳生子さんの父に頼み込んで社長となります。
 代が替わっても変わらず大切にしてきたのは、地域の味を守ること。「親子3代使っているという声をよく聞くので、お客さんの味を守ることが使命だと考えています」。醤油は、最終的に砂糖や塩を加えるなど、引き継いだレシピを基に昔から親しまれているマルキョーの味へ仕上げます。味噌は、大正時代から残る製麹(せいぎく)室でこうじから作ります。かつての職人から学び、夫婦で味を受け継ぎました。

味噌は、昔ながらの天然醸造で造るため、温度管理がしやすい春と秋が仕込みの時季。 仕込みを1週間行い、半年寝かせ発酵させて商品に

味噌は、昔ながらの天然醸造で造るため、温度管理がしやすい春と秋が仕込みの時季。 仕込みを1週間行い、半年寝かせ発酵させて商品に






定番の白味噌と赤味噌に加え、看板商品にと、四万十町産の大豆を使うなど国産の材料のみで造った味噌を新たに商品化

定番の白味噌と赤味噌に加え、看板商品にと、四万十町産の大豆を使うなど国産の材料のみで造った味噌を新たに商品化






プロフィール
竹中佳生子さん
丸共味噌醤油醸造場の先代の娘。高校卒業後に進学のため上京し、横浜の地ビール会社に勤める。25歳で帰郷して家業に入り、4代目女将に。須崎市出身。42歳

竹中栄嗣さん
丸共味噌醤油醸造場の4代目。大学卒業後、妻の佳生子さんと同じ横浜の地ビール会社で勤める。2005(平成17)年に結婚し、以来、味噌・醤油造りに携わる。土佐清水市出身。45歳


地域と関わり、発酵を知る場を

 なじみの味をお客さんに届けることに加え、地域活動にも積極的に関わってきた2人。「須崎に来たとき、須崎には何もないという地元の人の声をよく聞きました。自分の子どもにお父さん何をしてきたがと言われないよう、子どもたちが誇りに感じる町にしたいと思って」と栄嗣さん。さまざまな活動に携わってきましたが、新型コロナウイルスの影響でイベントは中止となり、家業も窮地に。「会社あっての私たちです。イベントが復活したらまた参加できるよう、今は自社の体制を見直しています」と佳生子さんは話します。
 これから会社として力を入れようとしているのが、味噌や醤油を使った加工品作り。昨年、工場内に加工場を新設しました。「家庭で加工品を使うため、味噌や醤油自体を使う人はさらに減るといわれています。でも、つゆやドレッシングなどのベースは、味噌や醤油が使われていることが多い。私たちもさまざまな加工品を作り、それを使ってもらうことで味噌や醤油を楽しんでほしいと考えています」。栄嗣さんが中心となり、現在、新商品作りが進められています。
 併せて注力しようとしているのが、夫婦で教える「味噌造り教室」です。発酵に長く携わり、食に取り入れる良さを感じるからこそ、味噌がどの材料で、どう造られているかを伝え、発酵食を身近に感じてほしいと言います。地域を思い、地域の味を守る夫婦は、日本の味を再発信しようと進んでいます。
 昔から日本で食べられてきた発酵食の味噌や醤油。今日の料理に、ぜひ使って、味わってみてください。

「味噌汁は、野菜がたっぷり取れるのがいい。わが家では、最初にたっぷり作り、継ぎ足して何度も食べます。足せば足すほどおいしくなるんです」と佳生子さん

「味噌汁は、野菜がたっぷり取れるのがいい。わが家では、最初にたっぷり作り、継ぎ足して何度も食べます。足せば足すほどおいしくなるんです」と佳生子さん



製麹室で味噌造り用の米こうじを製造。こうじを作る際は、質を整えるため、1時間ごとに夜通し確認するそう

製麹室で味噌造り用の米こうじを製造。こうじを作る際は、質を整えるため、1時間ごとに夜通し確認するそう




醤油は、さしみ醤油、こいくち醤油「松の甘口」「小桜」など5種類。4代目になってから、大正レトロなラベルに変え、お試し用の小瓶を新しく追加

醤油は、さしみ醤油、こいくち醤油「松の甘口」「小桜」など5種類。4代目になってから、大正レトロなラベルに変え、お試し用の小瓶を新しく追加


歴史を感じさせる醸造場の建物。長年閉められていた事務所兼店舗を2人が4代目を継いでから開けたところ地域の人が訪れ、つながりが広がったそう

歴史を感じさせる醸造場の建物。長年閉められていた事務所兼店舗を2人が4代目を継いでから開けたところ地域の人が訪れ、つながりが広がったそう



◎丸共味噌醤油醸造場
須崎市中町1-2-21
TEL 0889-42-0129
営/8:00~17:00 
休/土・日・祝
HP/http://jozojo.com
<販売先>店舗、自社HP、てんこす(高知市)など

掲載した内容は発行日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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