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2022.01.23 08:00

【日米首脳会談】したたかな外交どう展開

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 岸田文雄首相とバイデン米大統領がテレビ会議形式で行った初の本格会談は、日米同盟の強化や経済協力の推進を確認した。
 首相は先の施政方針演説で、この1年は日本外交のしたたかさが試されると位置付けた。覇権主義的な動きを強める中国への対処が念頭にある。同盟の在り方と独自の立ち位置を探ることになる。
 新設で合意した外務・経済担当閣僚による協議の枠組みは経済版「2プラス2」となる。経済安全保障面での連携強化を狙う。
 新型コロナウイルス感染拡大や米中のハイテク覇権争いは、半導体や医療機器などの供給体制のもろさを露呈した。また、巨大経済圏構想「一帯一路」を推進する中国は、環太平洋連携協定(TPP)に加盟申請するなどインド太平洋地域での影響力拡大を図っている。そうしたことへの警戒感は根強く、問題回避に取り組むことは不可欠だ。
 重要物資の確保や生産能力の向上が滞れば経済社会活動に響く。連携を有効に機能させたい。ただ、日本は中国との経済的なつながりが強いだけに米中対立に巻き込まれないよう注意が必要だ。企業活動への関与の在り方も課題となる。
 厳しくなる安全保障環境を受け、首相は防衛力を抜本的に強化することを伝えた。昨年4月の菅義偉前首相時の首脳会談は、日本は防衛力強化の決意を共同声明に書き込んだ。それを再確認したことになる。
 その姿勢は「敵基地攻撃能力」の保有議論とも関係する。首相はあらゆる選択肢を検討すると、施政方針演説でも訴えている。
 しかし前のめりでは駄目だ。北朝鮮の核兵器や弾道ミサイル開発なども緊張を高めている。それへの対処は必要だが、専守防衛の在り方をなし崩しにすることは許されない。
 両首脳はまた、「核兵器のない世界」の実現への協力で一致した。首相は国会で「共に取り組むことを確認したい」と述べており、米側と折り合える首相なりの関与の仕方を探ってきたのだろう。
 日米はこの会談の前に、核拡散防止条約(NPT)に関する共同声明を発表し、政治指導者らに広島、長崎を訪問するように要請した。オバマ元大統領の広島訪問を思い起こさせ、意義ある取り組みとなる。
 核軍縮は長期停滞している。NPT再検討会議が延期された。核保有五大国は核兵器禁止条約の第1回締約国会議をにらみ、核戦争回避をうたう声明を発表した。言うまでもなく必要なのは具体的な行動だ。
 首相は早期訪米を模索したが新型コロナ禍で実現できていない。そうした中、在日米軍のコロナ対策で緊密に協力するとしたのは当然だ。だが、今回の感染が、基地がある地域での水際対策の不備が指摘されていることを考えれば、抜本対策に踏み込まないままなのは失望を招く。
 今春にはバイデン氏が日本を公式訪問する見通しとなった。中間選挙を控えるバイデン政権との距離感が試される。

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