2022.01.22 08:00
【代表質問】言葉が丁寧なだけでは
新型コロナ対策に「全身全霊で取り組む」と決意を示した首相だったが、答弁は従来の政府説明を繰り返すにとどまった印象が拭えない。対する野党側の追及も攻めあぐねた感が強く、議論は深まっていない。
立憲民主党の泉健太代表は、極めて感染力の強い一方、重症化率は低いとされるオミクロン株の特徴を前提とした対応の必要性を指摘。まん延防止等重点措置や緊急事態宣言の適用に関する要件や対策の見直しを迫った。
これに対し、首相は医療体制の逼迫(ひっぱく)度を踏まえた「総合的判断」は変更しない姿勢を強調するにとどまった。
政府の基本的対処方針にしても飲食店への時短要請を柱としている。従来の対策がオミクロン株にも有効なのか。妥当性を疑う声が飲食業界だけでなく、自治体からも上がっている。
政府分科会の尾身茂会長がオミクロン株の特徴から従来の人流抑制より、感染リスクが高い場面での「人数制限」を重視する考えも示している。国民の行動制限に関わる部分であり、首相はきめ細かく説明すべき場面だったろう。
政府は、病床確保を強化する感染症法改正案の通常国会提出を見送った。感染症危機の司令塔となる官邸機能の強化など中長期的対応は6月をめどに策定する。泉代表は「悠長だ」と批判したが、首相は「これまでの対応を客観的に検証するため必要な期間だ」と切り返した。
だが、国内の感染者は驚異的な速度で増え続け、全国的にも重点措置の適用地域は拡大し続けている。
課題の洗い出しは必要としても、迅速な対応が求められよう。医療体制の逼迫や社会機能への影響が現実味を帯びる中、そうした事態を防ぐ方策は早急に示す必要がある。
成長と分配の好循環をうたう「新しい資本主義」は、論戦を通じてもどんな社会像を目指しているのかがぼやけたままだ。
首相は毎年度の成長・分配戦略の施策を記した工程表を作成するとした。しかし、実行計画や工程管理はあくまで実現への手段にすぎない。
所得をいかに上げるのか。都市と地方の格差をどう是正するのか。目的である具体像に向け、政策の肉付けを急がなければならない。
首相の答弁は従来説明の繰り返しで、言葉は丁寧ながら、野党との議論はかみ合っていなかった。夏の参院選をにらみ、守りに徹したのだろう。感染症法改正案の見送りなど、提出法案を絞ったのも争点化を避ける思惑とみられる。
だが、国会論議は国民の理解を得るためのものだ。論戦の舞台は一問一答形式の予算委員会に移る。「信頼と共感」の政治に向けた首相の信念が問われている。