2022.01.21 16:02
【動画あり】連載「転倒予防、始めませんか?~土佐リハ生の運動講座~③」
「物忘れ」が増えた人に…運動しながら認知機能も高めましょう
土佐リハビリテーションカレッジ(高知市大津乙)の作業療法学科3年生が提案する「自宅でできる転ばない体づくり」。前回は筋力とバランス能力を鍛えました。最終回は転倒予防と認知機能を向上させるための「デュアルタスク」に挑戦します。
認知機能と転倒。一見関係なさそうですが、実はつながっています。認知機能が低下すると、さまざまなことに注意を向けられなくなります。その結果、段差などに気付かず転倒してしまうなど、日常生活に支障が出ます。
デュアルタスクとは、日本語で「二重課題」です。例えば、足踏みをしながら簡単な計算やしりとりを行うといったように、運動と認知課題を同時に行います。
今回はデュアルタスクとして、「ワンツー・ステップ」「古今東西ポンポンポン」を紹介します。どちらも土佐リハ生オリジナルの課題で、いすに座って行います。
■ワンツー・ステップ
足踏みをしながら数字を唱え、5の倍数で手足を上げます。1人でもできます。
①硬めのいすに座る。背中は背もたれから離す
②足踏みに合わせて数字を唱える。「いーち」で左右1回ずつ足踏み
③5の倍数で両手を上げる
④慣れてきたら、「5」で右手・左足、「10」で左手・右足、「15」で右手・左足というふうに、順番に手足を上げる
手足を動かすタイミングは「3の倍数にする」「片手を交互に上げる」といったように変えていきましょう。転倒を予防するため、手足は必ず交互に上げてください。
■古今東西ポンポンポン
お題を決め、当てはまる言葉を足踏みのリズムに合わせて言っていきます。「古今東西ゲーム」のイメージです。
①4~5人程度で、円になって座る
②お題をA、Bの二つ決める。例えば「Aは食べ物、Bは動物」
③足踏みをしながら、AとBのお題に当てはまる言葉を時計回りで挙げていく、AとBのどちらの言葉を言ってもOK
④足踏みはAのお題の時は「普通の足踏み」、Bのお題の時は「かかとで足踏み」。お題が変わった時はお題を言い終わったタイミングで足踏みを変える。「キュウリ(1、2、3、4)トマト」というリズムで、言葉と言葉の間は4拍空ける。お題に当てはまらない言葉が出たらストップして、最初から行う
オリジナルの課題を考え、学生同士でやってみました。私たちも足踏みが止まったり、言葉が出なかったり、倍数が分からなくなったりしました。ですが、失敗もまた楽しく、盛り上がりました。テンポが速くなると難しくなりますので、ゆっくりと始めてください。
デュアルタスクを含む運動プログラムを行うことで、転倒予防だけでなく、「軽度認知障害」の人にもいい効果がもたらされることが分かっています。
軽度認知障害は認知症の一歩手前の状態で、65歳以上の高齢者の2割弱に当てはまると推定されています。記憶力や注意力などが低下しているものの、日常生活に支障を来すほどではないので、多くの人が気付かないまま過ごしています。
デュアルタスクで脳の活性化を図ることで、認知機能の低下を防ぐことができます。さらに、生活の中で「転びそうだ」という危険を察知し、転倒を予防することができます。
「最近、物忘れが多いなあ」という方は、家族や友人など大切な人の顔や名前、思い出を忘れないためにも、ぜひ取り組んでみてください。
(この連載は土佐リハビリテーションカレッジ作業療法学科3年生が「地域作業療法学」の授業で取り組み、講師の稲富惇一さん、桂雅俊さんが監修しました)