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2022.01.07 08:37

コンパクト化へ政策誘導―高知(ここ)に住まう 第1部 県都マンション熱(6)

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 1970年代から本格化した周辺部の宅地開発に伴い、中心部の空洞化が進んだ高知市。その動きは、地域別人口の推移でも顕著に現れる。

 高知市の人口は、81年から2001年までの20年間で約2万5千人増えた。その内訳を、市域を26分割した「大街」別に見ると、上街、高知街、北街といった中心市街地は20~30%減に。一方、宅地が造成された郊外エリア(高須、長浜、大津、介良)は、50~70%の伸びとなっている=図参照

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 流れが変わったのは03年。当時の松尾市政は、まちづくりの指針とも言える「都市計画マスタープラン」に「市街地の拡大抑制」「コンパクトなまちづくり」を盛り込み、郊外の宅地開発とは逆の方向を打ち出した。

 「宅地が広がれば、水道や道路などの公共インフラ整備が欠かせず、維持管理の財政負担が増す。人口が減る局面も見えていた」。プランに携わった市OBはこう振り返り、「高知市の住宅政策と言えば、それまでは市営住宅の提供や、面的に環境を改善する土地区画整理事業が中心だった。コンパクトシティーへの政策誘導は初めてだった」と話す。

 その実践へ市が着手したのが、国の財政支援が受けられる「中心市街地活性化基本計画」を通じた「まちなか居住」の推進だった。実際は有効な策が見いだせず、岡﨑市政に引き継がれた後も郊外の宅地開発がしばらく続いたが、10年代半ばから状況が変わってきた。

 一つは、ダイエー跡地の「帯屋町チェントロ」(帯屋町2丁目)。書店、賃貸マンション、クリニックなどが入った複合施設の整備を、公費4億円を支援して15年、実現させた。さらに18年には、旧追手前小学校跡に県市合築の図書館「オーテピア」を建設した。

 市はほかにも病院や高齢者施設の中心部への誘致に挑戦。「集客力のある施設、生活に必要な施設ができれば自然に人も集まる」(市幹部)との戦略が、結果に結びついた。

 01年から21年までの20年間で市人口は4200人減少。その中で、帯屋町などを含む「高知街」は人口が増えた3地区の一つに入った。
 さらに16~21年の直近5年間を見ると、増加したのは「高知街」と「北街」(桜井町、はりまや町)のみ。かつての空洞化から「おまち回帰」が鮮明になっている。

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 その原動力となっているのが近年の市中心部へのマンション建設ラッシュ。ただ、市都市建設部の幹部は「方向性としては歓迎」としながら「正直、これだけマンションが建つとは予想していなかった」と明かす。

 行政として「まちなか居住」は打ち出したが、マンション単独の整備に補助金などはなく、他の支援メニューがインセンティブ(動機づけ)になった例もないという。

 「政策的なまちづくりというよりも、民・民の需要と供給の関係で動いた結果」。市幹部がこう断じるマンションラッシュ。それが可能になる背景はほかにもあった。(報道部・浜崎達朗)

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