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2022.01.01 05:00

【再生へ 展望】格差と分断乗り越えたい

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 2022年が始まった。
 新たな年に決意を新たにしたい一日だ。ただ、長年慣れ親しんだ「日常」にはまだ遠く、先が見えない不安がついて回る。そんな方も多い年明けではないだろうか。
 新型コロナウイルスと向き合ってもう2年になる。この冬もまた未知の部分が多い新たな変異株、オミクロン株の市中感染が国内でも広がっている。「第6波」に備えた警戒は引き続き怠れない。
 長引くコロナ禍は、私たちの社会で置き去りにされてきた課題を次々に浮き彫りにしてきた。非正規雇用者や中小企業の苦境。テレワークの普及などで従来の働き方が見直されている動きもそうだろう。
 行政のデジタル化の遅れも露呈した。給付金や雇用調整助成金のオンライン申請ではトラブルが続出。顕在化した問題はこれ以上放置せず、「コロナ後」も見据えて改善していかなければならない。
 昨年10月に就任した岸田文雄首相は、恩恵が大企業や富裕層に偏ったとされる経済政策「アベノミクス」の路線を修正するという。成長と分配の好循環を実現する「新しい資本主義」の構築を唱えている。
 しかし21年度補正予算、22年度予算案とも独自色は薄く、「岸田色」をどう打ち出すのか注目される。
 長く停滞する日本経済の側面が報じられている。経済協力開発機構(OECD)によると、20年の平均賃金は物価水準を考慮した購買力平価ベースで約438万円。この30年間でわずか4%しか増えておらず、35カ国中22位に沈んだ。
 約1・5倍に増えた米国、約1・4倍の英国とは対照的だ。働く人への還元が進まない理由の一つは企業の慎重姿勢とされる。国内市場の成長性への懸念などから人、設備に投資が十分向かわなかった。
 首相が言う「好循環」や中間層の所得拡大、格差の是正に転換していく政策をどう示していくのか。今年は本格的に問われる。
 岸田政権は安倍、菅両政権が曖昧にしてきた「負の遺産」も抱える。森友学園に関する財務省の決裁文書改ざん、日本学術会議の会員任命拒否問題…。これらも放置するようでは、政治への信頼は築けまい。
 世界に目を転じれば、米国と覇権主義的な動きを強める中国との対立が激化し、分断を深めている。
 バイデン米政権は、2月の北京冬季五輪に政府代表を派遣しない「外交ボイコット」を発表した。新疆ウイグル自治区や香港などでの人権侵害に抗議する狙いで、岸田首相も政府代表団を派遣しないと表明した。
 ただ、昨秋の世論調査では9割近くが米中対立に不安を感じると答えている。米国追随にとどまらず、国民の不安を軽減するための主体的な外交の道はないだろうか。日中国交正常化50周年の今年も、独自の立ち位置を探る努力が求められよう。
 コロナ禍に傷み、乗り越えるべき格差や分断も目立っている。課題に一つ一つ向き合い、再生、再構築へ向かう年にしたい。

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