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2021.12.10 08:00

【外交ボイコット】五輪で対立を深めずに

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 「平和の祭典」であるはずの五輪が対立の場となったようだ。
 バイデン米政権は、来年2月の北京冬季五輪・パラリンピックに政府代表を派遣しない「外交ボイコット」を発表した。この方針にオーストラリア、英国なども追随する考えを明らかにした。中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権侵害に抗議する狙いを示す。
 中国は国の威信をかけて冬季五輪に備えている。このため対抗措置をとると警告している。
 だが、中国はまず、各国の懸念は中国の対応から生じていることを認識する必要がある。人権侵害への批判を受けるたびに内政干渉とかわす姿勢が繰り返されてきた。これでは理解は得られはしない。
 米国などはひとまず外交ボイコットにとどめ、選手団は通常通り派遣する予定だ。政治とスポーツを切り離す姿勢で決定的対立には至ってはいない。とはいえ、中国側の感情を刺激したことは間違いない。対中関係に広く影響が及ぶとみられる。
 こうした動きに、日本外交は難しい判断を迫られる。信頼関係を強めたい米国は各国に同調を促す。経済的なつながりが強い中国とは関係改善を推進したいが、米国追従なら反発は避けられない。
 岸田文雄首相は、要人派遣の是非を国益の観点から自ら判断すると発言している。「人権外交」重視を掲げ、国際人権問題担当の首相補佐官を新設して中谷元氏を起用した。政権の姿勢が試される局面となった。
 政府は閣僚の派遣には大勢が消極的とされ、スポーツ関連組織の幹部にとどめる案が浮上しているようだ。主体的な判断とともに、丁寧な説明が欠かせない。
 バイデン政権はアフガニスタンからの撤退失敗など、外交での精彩を欠いている。インフレの進展もあって支持率は下降気味で、来年の中間選挙をにらみ対中姿勢を軟化させにくい状況にある。
 一方、習近平国家主席は五輪の成功で権威を高め、来秋の共産党大会で党総書記3期目を目指すシナリオを描く。そのためには対米対立を激化させたくないとの見方もある。
 ともに国内を意識しての対応を迫られる状況だ。先の米中首脳会談で、習氏がバイデン氏の五輪招待に言及するかが注目されたが、結局しなかった。今回の米国の対応を見越しての判断だったかもしれない。
 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は外交ボイコットに関し、IOCは政治的な中立を貫くとの立場を表明している。米中どちらにもくみしない姿勢で、問題を沈静化させたいのだろう。
 しかし、IOCにも厳しい視線が向けられる。身の安全が懸念される中国の女子テニス選手、彭帥(ほうすい)さんについて、バッハ会長が無事を確認したと発表したことがかえって違和感を深めている。
 女子テニス協会(WTA)は香港を含む中国で2022年の全大会の開催見送りを発表している。問い掛けるものは大きい。

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