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2021.12.07 08:00

【所信表明演説】信頼と共感を具体策で

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 新型コロナウイルス禍を克服し、新たな時代を切り開く。岸田文雄首相は所信表明演説で、その実現へ向け「丁寧で寛容な政治」を進める意向を表明した。
 そのために、国民の信頼と共感を得る必要性に触れたのは、10月の所信表明演説と重なる。首相の政治姿勢であり、また菅前政権の失敗を繰り返さないという思いが込められているのかもしれない。
 新型コロナ対策は課題のままだ。施策を充実させ、経済活動の回復につなげることが求められる。
 世界で急拡大する新たな変異株「オミクロン株」が国内でも確認された。首相は、最悪の事態を想定した備えと、細心かつ慎重に対応する立場を堅持すると述べている。警戒を強めるのは当然だ。
 ただ、水際対策で打ち出した国際線の新規予約の停止要請を3日で撤回し、政府の混乱ぶりが表面化する場面があった。国土交通省が先走ったようだが、これでは組織の体をなさない。そもそも、官僚はこうした判断を独断で行わないとする指摘もある。どういう意思決定が行われたか明らかにする必要がある。
 首相は演説で、外国人の入国を停止した判断への批判は全て負うと覚悟を示した。危機管理に指導力や責任を明確にすることは大切だが、丁寧な説明もまた欠かせない。
 ワクチンの3回目接種は、8カ月を待たずに、できる限り前倒しする考えを表明した。この対応に、判断を委ねられる自治体側の戸惑いが伝えられる。これまでにも国の方針のぶれや説明不足が混乱を招いた。繰り返しては信頼や共感は遠のく。
 首相は、通常の経済社会活動を取り戻すのはもう少し時間がかかると述べている。それまでの間、生活を支え、事業の継続と雇用を守ると強調した。危機を乗り越えるために施策を手厚く講じることは重要だ。
 国会に提出された補正予算案に、18歳以下の子どもへ10万円給付する事業費が盛られている。所得制限を設けたものの、先行分を含めた総額は2兆円近くになる。子育て支援か経済対策か分かりにくいという指摘も多い。事務経費も現金とクーポンとの併用とすることで多額になった。国会でしっかりと論じたい。
 補正予算案は、一般会計の歳出は補正予算としては最大の36兆円に迫る。歳入の6割を国債の発行で賄うため、年度末の発行残高は初めて1千兆円を突破する見通しだ。財政悪化に拍車がかかる。施策の実効性を吟味し、無駄の排除が不可欠だ。
 首相は、提唱する「新しい資本主義」の主役は地方と位置付ける。人口減少や高齢化、産業空洞化などの課題を、デジタルの力の活用で解決していくと訴えた。期待したいが、具体策をどう展開していくのか議論はこれからだ。疲弊する地方の転換点となる対策を探る必要がある。
 今国会は、国会議員に歳費とは別に支給される「文書通信交通滞在費」の扱いにも関心が向けられることを忘れてはならない。国民の信頼と共感に関わる問題である。

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