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2021.12.04 08:00

【日大トップ逮捕】教育機関の責任果たせ

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 元理事らによる背任事件に端を発した日本大学の不祥事は、トップの逮捕へと発展した。所得税法違反の疑いで、理事長の田中英寿容疑者が東京地検特捜部に逮捕された。
 教育の場である大学で不透明な資金に関わる問題が相次ぐのは、極めて異常な状況といってよい。だが、地検による強制捜査で9月に事件が表面化して以降、大学側は記者会見など公の場で説明の機会さえ設けてこなかった。
 田中容疑者が理事長を辞任し、新たな運営体制となる。改めて教育機関としての見識が問われている。
 医学部付属板橋病院を巡る背任事件では、建て替え工事の設計監理業務や医療機器などの納入に絡み、大学側に計約4億2千万円の損害を与えたとして、大学元理事ら2人が起訴されている。
 元理事らは田中容疑者に計1億円以上を渡したと供述しており、その関与が焦点となった。家宅捜索で自宅から1億円を超える現金も見つかったが、田中容疑者は受領自体を否定している。
 特捜部は共謀を裏付けられずに背任罪での立件は見送ったが、税務申告していなかった疑惑が浮上。東京国税局と連携した捜査の結果、2018年と20年分の所得計1億2千万円を隠し、約5300万円を脱税したとして田中容疑者を逮捕した。捜査の進展が待たれる。
 この間、大学側は不可解とも言える対応に終始した。説明責任を果たそうとする姿勢は全くみられない。記者会見は開かず、ホームページで「深くおわびする」といった形式的なコメントを出すにとどまった。
 一方で、被害者でありながら「税務申告は適切に行っている」などと田中容疑者を擁護するかのような声明を度々掲載し、被害届の提出にも後ろ向きな姿勢を取り続けた。
 文部科学省も再三、日大に対して対外的な説明のほか、背任事件などに関して第三者組織による調査と報告を行うよう指導していた。公益性の高い学校法人でありながら、ガバナンス(組織統治)が機能していなかったのは明らかだろう。
 大学関係者らによると、08年9月の理事長就任から続いた、田中容疑者のワンマン体制が影を落としていたようだ。人事権を振りかざし、運営方針に異を唱えた幹部が左遷されることもあったとされる。そうした恐怖政治が理事会などのチェック機能や自浄作用を奪っていった可能性は否めない。
 たとえそうだったとしても、多額の私学助成金を受ける学校法人として、不祥事の対応にあたる責任は免れるわけではない。自ら真相を明らかにし、説明責任を果たす姿勢を取り戻さなければ、再発の防止などおぼつかないだろう。
 トップの逮捕で大学のイメージはさらに失墜した。不安を募らせ、その影響を最も受けるのは学生や入試を控えた受験生にほかなるまい。大学は誰のためにあるのか。その原点に立ち戻ることなしに、信頼の回復は図れない。

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