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2021.12.03 08:20

高知政経懇話会 新政権と国内外情勢の行方 「インサイドライン」編集長・歳川隆雄氏

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安倍元首相との関係注目
 10月4日に岸田文雄内閣が発足し、低空飛行から安定飛行に移行しようとしている。岸田政権の特徴の一つが「高学歴」だ。

 閣僚20人のうち6人が東京大学・大学院の卒業生。政権の目玉として新設した経済安全保障担当相に起用した小林鷹之氏もそうだ。自民党執行部では茂木敏充幹事長らがそう。これほど高学歴の権力体制は記憶にない。

 岸田首相の派閥は、池田勇人元首相を源流とする宏池会。「お公家集団」とも呼ばれ、官僚出身が多い。戦は苦手だけどいろいろな準備事はうまそう、という派閥だ。

 総裁選では、岸田派で財務省出身の木原誠二氏が率いる東大卒など高学歴の当選3回生(当時)軍団が、どういう政策をどうアピールするかという準備をした。河野太郎陣営にはそういう作業を担うスタッフがおらず公開討論で窮する場面もあった。これが勝因の一つになった。

 新政権で木原氏は官房副長官に就き、バッジ組(国会議員)の中では首相の一番の右腕。政策のコンセプト作りなどを担う最側近3人のうちの1人だ。

 最側近のもう1人は元経産事務次官の嶋田隆・首席首相秘書官。事務次官経験者が秘書官になるのは前例がないが、「首席」を設けて権限を与えるとの考えで首相が嶋田氏を説得した。東大出身で地頭がよく、故・与謝野馨氏の秘書官も務めて政治家の発想ができると言われる。

 あと1人が、内閣官房の秋葉剛男国家安全保障局長。元外務事務次官で、課長時代から「将来は必ず事務次官」と言われていた。秋葉氏と嶋田氏が経済安全保障のコンセプトを作った。つまり、こうした優秀な官僚や、官僚出身の一部政治家に支えられているのが岸田政権だ。

 ただ、先行きは容易でない。財政支出55兆7千億円という過去最大の経済対策が閣議決定された。財務当局を押し切って決めたのに日経平均株価はあまり上がっていない。

 「成長と分配の好循環」と言うが、18歳以下への10万円給付などのばらまきであり、成長のプランや絵図が出ていない。市場には見抜かれている。

 安倍晋三元首相と岸田首相の関係も非常に微妙だ。2人は秘書時代、一緒につるんで遊びに行く仲で、付き合いは長い。しかし今は微妙なずれ、思惑の違いが生じている。

 岸田政権の人事に安倍元首相は相当大きな不満を持っている。その一番が官房長官人事。安倍氏は萩生田光一経済産業相を強く推し、それが難しいとなると、党人事で高市早苗政調会長を幹事長に推薦していた。松野博一官房長官は、岸田首相自身の人選だとの話がある。

 安倍元首相は自分でやるアクティブタイプ。岸田首相は方向性の確認さえすれば任せる。岸田首相が安倍離れをしつつあるのか、見極める必要がある。

 (外交の柱となる)日米関係では、バイデン米大統領は今、党内左派と激しいバトルをしている。来年の中間選挙に向けた支持拡大のため、経済対策法案など国内のことで頭がいっぱい。そうした中で岸田首相は、日米首脳会談の早期実現を求めている状況だ。

 としかわ・たかお 1947年東京都生まれ。70年に上智大中退後、週刊誌記者を経てフリージャーナリストに。情報誌「インサイドライン」を91年に発刊し、編集長。専門は国際・国内政治。


 高知政経懇話会(事務局=高知新聞企業)は毎月1回、第一線で活躍する著名な講師を招き、講演会を開いている。次回は12月7日、「文芸春秋」編集局長の新谷学氏。問い合わせは事務局(088・825・4328)まで。

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