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2021.12.03 08:00

【伊方原発再稼働】安全を重く受け止めよ

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 四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)がきのう、約2年ぶりに再稼働した。
 東京電力福島第1原発事故以来、原発への不信感は根強い。運転に前のめりになっては管理機能を低下させかねない。万全の安全対策と説明責任を求めたい。
 3号機は定期検査のため、2019年12月に停止した。この間、20年1月には広島高裁が運転差し止めの仮処分を決定した。これを不服とした四電の異議申し立てで、ことし3月に運転が容認されている。
 運転を禁じた決定は、地震や火山リスクに対する四電の評価や調査を不十分とした。異議審では、安全性の評価は不合理ではないと四電の主張をほぼ認める結果となった。
 一連の判断の前にも、3号機では運転差し止めの仮処分決定と異議審での取り消しが行われている。大規模自然災害の予測や備えを巡り、司法の見解さえ分かれる状況にあることを十分に認識する必要がある。
 福島第1原発事故は、原発でひとたび過酷事故が起きれば長期にわたり重大な被害をもたらすことを強く認識させた。専門家の見方さえ定まらない問題ならばなおさら、住民の不安と丁寧に向き合わなければ理解は得られはしない。
 安全性を揺るがせるのは災害ばかりではない。四電はことし7月、宿直者が原発敷地外へ無断外出を繰り返し、保安基準上必要な待機人数を満たさない時間帯があったことを発表している。10月の運転再開予定の延期につながるほどの事案を長く見逃してきたことにも驚く。
 再発防止策として、宿直者全員に衛星利用測位システム(GPS)付きスマートフォンを持たせるという。そうしたことが役立つにしても、決定打とはならないだろう。緊張感が乏しいのはなぜなのか。労務管理の在り方はもとより、安全意識の徹底が求められる。
 定期検査中には、制御棒を誤って引き抜き、また一時的にほぼ全ての電源が喪失されるなどのトラブルが相次いだ。原子力を扱う事業者としての適格性が問われたことを肝に銘じなければならない。
 3年ぶりに政府が改定した「エネルギー基本計画」は、30年度の電源構成に占める原発の割合を従来目標で据え置いた。近年の実績を大きく上回る数値で、今ある原発のほぼ全てを再稼働しないと達成は難しいとされる。新増設や建て替えの見通しは立たない。福島第1原発事故後、原発の運転期間は「原則40年、最長で延長20年」となり、それにのっとった動きも出ている。
 基本計画は、脱炭素化の達成へ再生可能エネルギーを優先的に導入する方針を示す。しかし、電力の安定供給や巨額投資に困難が伴う。原子力は可能な限り依存度を低減させる意向は維持しているが、それへ向けた強い姿勢はうかがえない。
 脱炭素を原発の長期的な運転につなげたい思いもあるようだ。それを住民がどう受け止めるのかに関心を向ける必要がある。

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