2021.11.22 08:33
森散歩 べふ峡編(上)赤や黄に…青も
黄葉が欄干のカップルを照らすように輝いた (香美市物部町)
ここは香美市物部町。同僚らとの道行きで、車内はにぎやか。くねくねの国道195号を進むにつれ、山肌に赤や黄、オレンジの葉が目立ってきた。いやが応にも気分が高まる。
と、さっきまではしゃいでいた同僚が「気分が悪い…」。急に無口になった。紅葉の名所として知られるべふ峡の駐車場に着いたころ。車酔いした同僚の顔色は、すっかり青くなっていた。
標高550メートル。澄んだ空気がひんやり、ほおをなでる。酔った同僚を車に置いて、白い石灰岩が転がる河原へ。瀬音が、切り立つ山々にこだまする。遠くに、赤くレトロな「錦帯橋」が見える。
橋に目をこらせば、欄干から川を眺めるカップル。後光のように、2人の背後に黄葉が見える。楽しげな2人をやっかみつつ、「ロマンチックのお裾分けをもらったのだ」。無理やり、自分を納得させた。
車に戻ると、血色の戻った同僚が笑って言った。「さあ、出発」。今回は石立山の登山道をぶらつく。
写真・森本敦士
文 ・深田恵衣