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2021.11.07 08:00

【脱石炭火力】撤退を真剣に検討せよ

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 地球温暖化対策を話し合う国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、日本がまた不名誉な「化石賞」に選ばれた。
 序盤の山場となる首脳級会合で演説した岸田文雄首相が、温室効果ガス排出量を2030年度に13年度比で46%削減する目標を示しながら、石炭火力発電の扱いに言及しなかったことが環境団体に酷評された。
 温暖化抑制へ「脱炭素」の機運が高まり、二酸化炭素の排出量が多い石炭火力発電からの撤退は世界的な潮流になっている。COP26でも主要なテーマの一つといってよい。政府はそうした流れを大きく見誤っていたのではないか。
 日本が掲げる「50年の排出量実質ゼロ」目標の信頼性を高める必要もある。石炭火力発電からの撤退を真剣に検討するべきだ。
 15年に採択された国際枠組み「パリ協定」は、産業革命以来の気温上昇幅を2度未満、できれば1・5度に抑える目標を掲げている。実現には、30年の温室効果ガス排出量を10年比で45%削減する必要があるとされる。
 だが条約事務局の分析では、各国の削減目標が達成された場合でも30年の排出量は16%増える見通しだった。COP26では、国際社会がこの差を埋める対策強化を一致して見いだせるかが問われている。
 会議序盤の議論でいくつかの前進もみられた。温室効果の高いメタンの排出量を20年比で30%削減する枠組みに100カ国以上が参加。温室効果ガスの吸収源となる森林の減少を30年までに食い止めるとの共同宣言も出された。主導した欧米は、指導力を誇示した格好だ。
 主要な排出国の削減目標も出そろった。排出量世界3位のインドは、「70年までの排出量実質ゼロ」を表明した。多くの先進国が50年達成を掲げる中で批判もあったが「30年までにエネルギー需要の50%を再生可能エネルギーでまかなう」という具体策は評価された。
 対照的だったのは日本だ。発展途上国の温暖化対策支援で、従来の600億ドルに加え、5年間で最大100億ドル(約1兆1350億円)の追加拠出を表明した。それは一定の評価を得たようだが、肝心の国内対策で脱炭素への道筋が曖昧なままでは批判されても仕方があるまい。
 脱石炭をテーマにした会合で、新たに23カ国が石炭火力発電を段階的に廃止する方針を示した。日本が石炭火力事業を支援する国々も含まれる。これで190の国や地域、組織が将来的な廃止や新規建設の停止で合意したことになる。
 日本はエネルギー基本計画で、石炭火力の30年度の構成比を19%とする。石炭火力に固執する背景には、成長戦略に石炭火力発電などのインフラ輸出を位置付けてきた経緯もあろう。
 自国の利益を優先する姿勢が果たして、人類共通の危機に向き合う国際社会で理解を得られるだろうか。すぐには無理でも、着実に脱石炭へ向かう道筋を探る必要がある。

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