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2021.10.26 08:35

気候変動を龍河洞で調査 高知大など鍾乳石から降水歴分析 高知県香美市

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洞内の石筍を採取する奥村知世特任助教(手前)ら=写真はいずれも香美市の龍河洞

洞内の石筍を採取する奥村知世特任助教(手前)ら=写真はいずれも香美市の龍河洞

 1億7500万年をかけて形成された香美市土佐山田町逆川の龍河洞でこのほど、高知大学などの研究チームによる科学調査が始まった。鍾乳石の石筍(せきじゅん)を採取して過去の降水や気象を分析し、気候変動の予測につなげる研究。関係者は「洞の学術的価値を高め、新たな魅力発見につなげたい」と期待している。

 石筍は、石灰質を含んだ水が落ちて固まり、下から生えるタケノコのような形となった鍾乳石。成分に含まれる酸素から形成時の気温や降水量、ウランやトリウムからは形成された年代が、それぞれ推測できるという。

石筍を作り出す滴下水を瓶に入れて採取

石筍を作り出す滴下水を瓶に入れて採取

 龍河洞は1931(昭和6)年の開洞直後から平成初めごろまでは発掘や生態調査が精力的に行われていたが、近年は未実施。今回の調査は研究チームが龍河洞保存会に提案し、国の天然記念物・史跡のため文化庁の許可を得て行われた。

 高知大海洋コア総合研究センターや東京大、富山大大学院の研究者ら5人が12、13の両日、非公開エリアの4カ所で調査。狭い通路をはって「ゆるぎの間」や「奥の千本」の奥に入り、既に折れていたものを含む石筍5本(高さ約20~90センチ、重さ最大約100キロ)と、石筍を作り上げる滴下水を採取した。

 洞内の環境を調べるため、5カ所に温度計測器を設置。洞壁には環境省が絶滅危惧Ⅰ類に分類する貝、ホラアナゴマオカチグサの個体や死骸が多数確認され、研究者らは「洞内の温度が安定し、環境が保たれている証拠」と話した。

洞壁で確認されたホラアナゴマオカチグサ。環境が保全されている証拠という

洞壁で確認されたホラアナゴマオカチグサ。環境が保全されている証拠という

 石筍は今後、同センターや台湾の大学で分析。気温や降水量の変動、年代などを調べる。龍河洞の形成時期や地殻変動の履歴解明などにもつながるという。結果判明には3年ほどかかる見込み。

 同センターの奥村知世特任助教(37)は「長い時間をかけて古い気候が記録された鍾乳石。結果を基に、将来のより良い気候予測につなげたい」。同保存会理事の南耕一さん(72)は「住民が守ってきた大切な資源。貴重な研究に貢献できたらと協力した。新しい発見が楽しみ」と期待を寄せていた。(小笠原舞香)

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