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2021.10.24 08:35

ちいきのおと(43)船戸(津野町)希少藻セイラン・養殖アメゴ 四万十源流の恵み豊か

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多くの人が訪れる四万十川源流点(写真はいずれも津野町船戸)

多くの人が訪れる四万十川源流点(写真はいずれも津野町船戸)


地域の誇り 歩いて魅力探索
 全長196キロの四万十川。その源流点は高岡郡津野町船戸の不入山にある。山の麓に広がる地域では人々が清流の恵みを生かした営みを続け、ウオークイベントなどで魅力を発信している。秋の川沿いを歩いた。 

渓流の中に育つセイランを収穫する西田善章さん=右=と末喜さん

渓流の中に育つセイランを収穫する西田善章さん=右=と末喜さん

 7月に移転オープンした宿泊施設「遊山四万十 せいらんの里」近くの四万十川では、5~10月ごろにセイランが採れる。花のランではなく、カワノリのことだ。

 河口の汽水域で育つアオノリ類とは別の種類。藻類学が専門の有賀祐勝・東京水産大学名誉教授(86)によると、生息には標高や水温水質、日照などの条件があり、全国十数カ所にしかない希少な藻だという。

 船戸の住民は昔から食用にしてきたが、西田善章さん(78)、末喜さん(74)夫妻は、道の駅布施ケ坂のオープンを機に1995年から土産物として出荷している。

 収穫現場の川幅は3メートルほど。ごうごうと流れる水の中、岩の表面がセイランの鮮やかな緑で覆われていた。所によっては腰まで漬かり、夫妻は手際よくむしり取っていく。全く採れない年もあるが、今年は豊作という。

 土産は十数センチ四方2枚入りで350円。善章さんは「こりこりした歯ごたえがあり、みそ汁や酢の物におすすめ。長い四万十川でもこの辺だけでしか採れない、不思議な恵み」と笑顔で話す。

養殖アメゴを出荷する中平利秀さん

養殖アメゴを出荷する中平利秀さん

 そこからさらに上流に進むと、岸辺にいけすがあった。71年、旧東津野村が整備した県内初のアメゴ養殖施設。役場職員だった中平利秀さん(69)が退職して払い下げを受け、75年に事業を引き継いだ。当初は苦戦したが、独学で生産技術を磨いたという。

 飼育数は20万~30万匹でピーク時の3分の1程度になったものの、放流や飲食店向けに県内外へ出荷する。中平さんは「養殖は清流のおかげ。四万十川は昔からアメゴがいたので飼育条件はいい」と世話に余念がない。

 国有林内にある源流点まで、最後の約1キロは未舗装の山道を歩く。道すがら樹齢100年超、一抱え以上ある杉の大木がそそり立つ。所々の斜面から湧き水がしたたり、こけむした岩々が神々しい雰囲気を醸し出す。

源流点に生息するイシヅチサンショウウオ

源流点に生息するイシヅチサンショウウオ

 標高1050メートルの源流点には「196キロの流れここに発す」と書かれた標柱があった。ひんやりした風と源流のせせらぎが心地いい。水辺には3センチほどのイシヅチサンショウウオがいた。清流の証しだ。

 住民組織の船戸活性化委員会「四万十川源流点」は草刈りやごみ拾いなど環境保全に努めつつ、毎年秋に源流点を訪れるウオークイベントを行っている。ガイドと弁当付きで初心者にも人気。水筒に源流水を入れて帰るのがお約束だ。

 高橋昌宏会長(77)は「源流点はふるさとの誇りで、たくさんの恩恵を受けている。一度訪れて四万十川を感じてほしい」と呼び掛けている。

 今年のウオークは11月13日、せいらんの里付近から往復約16キロを歩く。参加費2千円。申し込みは10月30日までに集落活動センターふなと(0889・43・9771)へ。(須崎支局・富尾和方)


《自慢のイッピン》
げんこつのような肉塊「世界一大きいスーパーやきとり」

 国道197号沿いの「山賊茶屋」は、アメゴ養殖を手掛ける中平利秀さんが1991年の布施ケ坂道路開通に合わせて開いた。看板商品はもちろんアメゴの塩焼きなのだが、インパクトはげんこつのような肉塊が勝るだろう。

 ニンニクベースの特製たれに漬け込んだ鶏もも肉1枚と半分を串に刺し、1時間半かけ炭火でじっくり焼き上げる。重さ約250グラムで自称世界一。食べ応えはまさにスーパーだ。開業数年後に「何か目を引くものを」と始め、狙い通り人気商品となった。1本税込み600円。

 店ではこのほか、カリッと揚げたボリュームのある芋てんや、おでんも販売している。営業は木―日曜の午前7時~午後5時。やきとりは昼ごろまでに売り切れることが多いそうだ。 


《ナイショのメイショ》
難所〝辞職峠〟

 船戸と旧葉山村を結ぶ布施ケ坂はかつて、大変な難所だった。今はすっかり改良されたが、大町桂月は茶畑を縫うつづら折りの旧道を「羊腸」と称し、トンネルにもその名が残っている。

 東津野、梼原方面に赴任する人が坂を上る途中、あまりの遠さに心細くなり辞職した―との話から「辞職峠」の別名も。船戸のある住民は「嫁さんを初めて連れて来たのは夜。昼やと不安になるかと…」と振り返る。

 一方で、船戸には路線バスが休憩するドライブインがあってにぎわいも見せた。そこで知り合い、結婚したカップルもいたというが、施設は昭和の終わりごろにはなくなった。立ち寄る人はめったにいないものの、跡地から眺める茶畑と山の景色は今も変わらない。


《ちょっとチャット》
川田凌駕君(11)中央小5年

 秋はクリ拾いが楽しい。家で食べる甘露煮や栗ご飯、ロールケーキ、どれもおいしい。冬はそりで雪滑り、春はタケノコ掘り、夏は川で釣り。一年中楽しめる船戸は最高。もうちょっと人が増えて、近くに友達がいればもっといい。秋は花取り踊りや神楽もあるので、本番に向けて練習を頑張ります。

 船戸は東西に長い津野町の真ん中あたり。旧船戸村が明治の合併で東津野村となり、さらに葉山村との合併で2005年に同町の一部となった。気象庁の観測所があり、県内有数の多雨地点。四万十川源流域には追合の滝や稲葉洞などの名所が点在する。今月8日現在161世帯331人。

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