2021.10.07 08:41
LGBTは個性...自分らしく働ける職場実現 葛目さん(南国市出身)偏見乗り越え、都内で介護会社
新型コロナウイルス拡大前、事業所でスタッフと談笑する葛目奈々さん=左から2人目(葛目さん提供)
「自分は他の人と違う」。葛目さんがそう思ったのは高校時代。中学の時も男性を意識することはあったが、同級生の男子に初恋をし、心と体の不一致を確信した。いじめもあり、違いを認めることが怖く、つらさから高校を中退した。
その後、高知市内のニューハーフの店で働き始めた。店では先輩もお客さんも自分を受け入れてくれた。居心地が良かった。
そんな世界の「上」を目指して、20歳で上京。数年後には、新宿の有名なショーパブで売れっ子ホステスになった。性別適合手術も受けた。
ただ、母と姉が看護師だったためか、次第に「誰かのためになる仕事をしたい」と思うようになった。通信制高校を卒業し、看護学校へ。しかし、訪ねた10以上の学校すべてで「外見と性別が違うと、患者が混乱する」と門前払いを受けた。「日本は自分が描く夢も達成できない国なんだ」と落胆した。
看護師の道を絶たれ、改めて何をしたいのか自問自答した。旧知の客の勧めもあり、出した答えは介護施設の経営。「利用者の人生の最期に携わり、自分らしく過ごす支援ができる」という介護の仕事に魅力を感じた。
看護師を目指した時と同じように、ヘルパー資格を取る学校への入学を拒否されるのではないか、という不安もあった。だが、見た目や過去に関係なく受け入れてくれた。「介護する側が自分らしく生きることが、利用者の自己実現にもつながる」。そんな言葉をもらったこともある。介護の世界に、自分の居場所を見つけたと思った。
28歳でデイサービスを運営する会社「セブンスカイ」(本社=東京都杉並区)を起業。それから10年余り経た現在、都内に6カ所の事業所を構える。
会社では、LGBTの人向けの求人も出している。自分と同じように「昼間働く場所がなかった人の受け皿になりたい」からだ。LGBTへの理解は近年広がりつつあるとはいえ、「職に就く時にオープンかというと、決してそうではない」と話す。
偏見やいじめを経験することも多いLGBTの人は、周囲にアンテナを張って、人を観察する能力にたけており、それは介護に向く面もあると感じる。
葛目さんは言う。「LGBTは一つの個性。誰もが努力次第で自分らしく生きられる社会、会社を目指しているんです」