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2021.09.15 11:00

イドバタ 新型コロナワクチンってどんなもの?吉川先生に聞きました

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 なかなか収束が見えない新型コロナウイルス感染症。そのワクチンは発症予防効果だけでなく、感染防止や重症化予防にも有効とされています。ただ、新しいワクチンのためか、本当かどうかわからない情報も飛び交い、「本当に安全なの?」「副反応が怖い」といった不安の声がイドバタ編集部に届きました。新型コロナのワクチンってどんなもの? 皆さんから寄せられた疑問を基に、高知県内でたくさんの子どもたちを診察してきた小児科医で高知県感染症対策協議会会長の吉川清志(きっかわ・きよし)さんに、ワクチンの仕組みや噂について聞きました。


目次
・「mRNAワクチン」とは?
・ワクチンの安全性は?
・どんな副反応があるの?
・「ワクチン接種後に死亡」どう受け止めればいい?
・子どもや、妊娠中・母乳育児中の女性への接種は?
・副反応がない人は免疫ができていない?
・「デルタ株」は子どもに感染しやすい? 
・若い人はワクチンなしでも大丈夫?
・インフルエンザにあまりかからない人は、新型コロナもかかりにくい?
・ワクチンを接種すれば、マスクを外していい?
・接種をしたがらない人とどう接したらいい?
・メッセージ


■新型コロナウイルスワクチンの仕組みや安全性

Q 新型コロナウイルスのワクチンは「mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン」と聞きますが、これは何ですか?リスクはありますか?
A 新型コロナウイルスの表面にある「スパイクタンパク質」に対する免疫をつくるワクチンです。副反応はゼロにはなりませんが、安全性と有効性が確認されています。
  
 従来のワクチンには、病原体の感染力を弱めた「生ワクチン」と、感染力はありませんが免疫の付き方は少し弱くなる「不活化ワクチン」があります。

 新型コロナのワクチンは「mRNAワクチン」です。「スパイクタンパク質」に対する免疫をつくるワクチンです。以下の流れです。

mRNAを注射する(→mRNAは数日で壊れる)

体内にスパイクタンパク質がつくられる(→スパイクタンパク質は 2 週間で消失する)

スパイクタンパク質に対する免疫ができる

 コロナウイルスは、表面にあるスパイクタンパク質が人間の細胞にくっついて感染します。mRNAワクチンは、このスパイクタンパク質の遺伝情報であるmRNAを注射して、人の細胞にスパイクタンパク質をつくらせ、それに対する免疫をつくる仕組みのワクチンです。このワクチンによってコロナに感染することはありません。

 免疫ができると、人の体内に侵入したコロナウイルスが人間の細胞にくっつけなくなり、体内で増えることができなくなります。ワクチンによってつくられたスパイクタンパク質は 2 週間で消失します。
 
 mRNAワクチンでは、スパイクタンパク質に対する免疫のみがつくられます。そのため、ワクチンでできた免疫が人間の組織を攻撃する危険性が少なく、従来のワクチンよりも中長期的な副反応(健康被害)が出にくいと考えられます。mRNAは数日以内に壊れるため、長く体内に残ることはありません。また人間の遺伝子(DNA)の中にも入れないので、人の遺伝子に変化を起こすこともありません。



Q 短期間で開発されたワクチンですが、安全性に不安はないのでしょうか?
A 長期間の研究を基に開発され、安全性も確認されています。

 インフルエンザウイルスなどに対するmRNAワクチンは何十年も前から研究されてきました。研究で蓄積されたデータから、新型コロナワクチンが短期間で開発されました。まず治験により安全性、有効性が確認され、その後多くの人に実際に使用された結果承認されたワクチンですので、その指摘は当たりません。ワクチン効果の持続期間や副反応については引き続き検証中です。


Q ワクチンの副反応にはどのようなものがありますか?
A 接種した部位の痛み、疲労や頭痛、発熱などが報告されています。

 ワクチンの副反応は、1回目より2回目の方が多いです。症状としては接種した部位の痛み、疲労や頭痛、筋肉痛、発熱などがありますが、多くの人は2~3日のうちに良くなります。国内外で行われた治験によると、プラセボ(偽薬)を接種した人も一定数が同様の副反応を示すことが分かっています。ワクチンへの不安が副反応を強くさせている可能性もあるので、不安なことがあれば医師に相談し、リラックスして臨みましょう。


Q 「ワクチン接種後に死亡した」という行政の発表をどう受け止めればいいですか?
A 「ワクチンそのものが原因」と確認された例はまだありません。

 接種した後に亡くなった場合、直ちにワクチンによる副反応と考えないでください。現在、厚生労働省が接種後に亡くなった方の死因とワクチンの関係を検証しています。亡くなった方には基礎疾患があった方が多く、「ワクチンそのものが原因でなくなった」と確認された例はまだありません。

 接種する時に緊張や不安が強いと、血圧が上がったり、もともとあった体の不調が悪化したりすることもあります。接種する際は、体の不調やワクチンへの不安など、細かいことでもいいので医師に相談してください。
 

Q 子どもや、妊娠中・母乳育児中の女性への接種で気を付けることはありますか?
A 子どもや若者は、副反応が高齢者よりも出やすいですが、メリットとデメリットを理解して判断しましょう。また、不妊や、胎児、赤ちゃんへの悪影響は確認されていません。

 若いと免疫ができやすい(体の中に入ってきた異物に対する反応が強い)ので、子どもは若い人と同様に副反応が出やすくなりますが、重い副反応の危険性が特に高まるわけではありません。12 歳以上で接種できます。

 日本小児科学会は「健康な子どもへの接種は意義がある」「周囲の成人の接種が重要」としています。デルタ株の小児への感染状況をみると、接種のメリットは高まっていると思われます。

 若い人はワクチンを打つ際の不安や緊張で、血圧が下がって失神する「血管迷走神経反射」が起こる場合があります。横になって打つこともできますので、不安が強い人は頑張り過ぎずに医師に相談してください。
 
 また、「不妊になる」「流産や早産する」といった事実はありません。妊娠中の人も、これから妊娠を考えている人、授乳中の人も接種してかまいません。

 特に妊娠後期( 28 週以降)にコロナに感染すると重症化しやすいとされ、日本産科婦人科学会などは、妊婦は時期を問わずワクチンを接種するよう勧めています。

 ワクチンで得た免疫は血液を通して赤ちゃんにも移行するので、赤ちゃんを守ることにもつながります。妊婦さんやその家族は、赤ちゃんの命を守るためにも感染予防に努めてください。

 妊婦さんにワクチンの副反応で熱が出た場合、解熱剤アセトアミノフェン(カロナールなど)は服用して大丈夫です。妊婦さん以外はロキソニンなどを服用しても構いません。


Q 副反応がないと、免疫ができていないのでは?
A 副反応が出なくても、免疫はできています。心配ありません。



■「デルタ株」の特徴や対応について


Q デルタ株は子どもが感染したり、重症化したりしやすいのですか?
A 子どもが特にかかりやすいというわけではなく、重症化することもあまりありません。

 デルタ株は感染力が強いことが特徴です。従来株の 2 倍、イギリスで確認された「アルファ株」の 1.4 倍の感染力があると言われ、これまで大丈夫だった密閉、密集、密接の程度でも感染の可能性があります。

 子どもへの感染者数も増えていますが、特に子どもがかかりやすくなっているわけではありません。ワクチン接種が進んだ上の年代の感染者割合が抑えられた一方、全体の感染者数そのものは増えている結果と思われます。子どもは重症化することはあまりありませんが、無症状が多い大人と違い、熱や咳、倦怠(けんたい)感などの症状が出ることが多いようです。


■ワクチンの噂、これホント?


Q 「若い人は新型コロナにかかっても大丈夫」というのは本当ですか?
A 一定割合で重症化する人もいます。
 
 若い人が感染して亡くなることは少ないですが、一定割合で重症化する人はいます。油断はしないでください。

 もし自分が軽症だったとしても、同居している家族や、近い距離で、または長い時間会話をした人は、濃厚接触者と判定され2週間の健康観察が必要になります。その間は外出できず、仕事や学校に行けないので、重症化しなくても周囲の人に大きな影響があるのです。


Q 「インフルエンザの予防接種をしていなくても今までかかっていない」人は、新型コロナも大丈夫ではないでしょうか?
A インフルエンザと異なり、新型コロナウイルスの免疫は多くの人が持っていません。

 インフルエンザが人に感染するようになってから非常に長い時間がたち、予防接種も進んでいるので、多くの人が一定程度免疫を持っています。一方で、新型コロナウイルスは人に感染し始めて2年足らずなので、みなさん免疫がありません。ですから、インフルエンザにはかからなくても新型コロナウイルスには感染します。免疫を持つためには感染するか、ワクチンを接種するかどちらかです。新型コロナウイルスワクチンの発症予防効果は、ファイザー社製は95%、モデルナ社製は94%あり、約50%のインフルエンザワクチンより有効であることも確認されています。

 「ワクチンを打つより実際にかかって免疫をつくればいい」という声もありますが、お勧めできません。新型コロナウイルスにかかると重症化する可能性があるだけでなく、それに伴う合併症で苦しむ可能性もあります。ワクチンを接種することで、そのいずれもが防げるのです。0歳の赤ちゃんが15~16回、1歳の幼児が5回の定期予防接種を受けている理由も同じです。



Q ワクチンを接種すれば、マスクを外したり外出したりしても大丈夫ですか?
A 地域の感染状況が落ち着くまではこれまで通りの予防を続けてください。

 ワクチンを接種すれば、感染や重症化のリスクはかなり下がります。ファイザー社製のワクチンの発症予防効果は 95 %です。これは、未接種者が 100 人感染しても、接種者は 5 人の感染に抑えられるということです。

 地域の感染状況が落ち着くまでは、接種後も気を緩めないでください。自治体の警戒レベルや行動制限を確認して、マスクや手洗いを徹底する、3密を避けるなどこれまで通りの対策を続けてください。

 マスクは不織布がベストで、ウレタンでは予防効果が低いです。再使用できるものを使う場合は布マスクにしましょう。

 
Q ワクチン接種をしたくないという人が身近にいます。どう接したらいいですか?
A それぞれの事情があります。接種しない人はしっかり感染予防を。

 ワクチンの成分にアナフィラキシーが起こる可能性のある人をはじめ、ワクチンが打てない人もいます。打てない条件には当てはまっていないけれど、打ちたくない人もいます。それぞれの事情や気持ちがあるので、責めてはいけません。それぞれの方がしっかり感染予防をすることが大切です。

 ただ、情報を知りたいときには、厚労省や各医学会などが出している正しい情報を確認してください。ワクチンには副反応はありますが、それを上回るメリットがあります。その上でワクチンを打たない選択をするときは、より一層感染予防を徹底してください。


吉川先生からのメッセージ

ワクチンを打つことで、自分も身近な人も守りましょう
 
 どんなワクチンにも副反応はあります。新型コロナウイルスワクチンは安全性と有効性が確認されており、副反応も 2、3 日中にはほとんど回復します。感染するリスクを考えれば、ワクチンを打つメリットは大きいと思います。

 ウイルスから自分を守ることは、周囲の身近な人を守ることにもつながります。皆さんの大切な時間と生活を、感染するリスクを低くして楽しめるように、ワクチンを接種することをお勧めします。

 不安も制限も多い日々ではありますが、多くの人がきちんと予防に努めれば、それほど遠くない時期に必ず状況は好転します。そのためにも、信頼できる情報を基に予防をしていきましょう。

高知のニュース イドバタ

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