2021.09.20 08:33
〈はつらつ人生〉アユ漁60年、今も川へ 90歳、香南市・寺村さん「よっ」と網
「取れたらうれしゅうて。くせになる」と笑う寺村幸雄さん(香南市野市町深渕)
物部川で育ち、幼い頃から川遊びや釣りに親しんだ。「川の上から稚魚がぎょうさん見えよった」と懐かしみつつ「ダムができて水の濁りが取れんなって、数はだいぶ減ったねえ」。そう話す口ぶりには、一抹の寂しさがにじむ。
農業で生計を立てていた30代の頃、農閑期に始めたアユ漁は今でも現役。最近は「こけたら危ない」と知人が船頭をしてくれるようになったが「1人で行きたいけんど…」と、ちょっぴり口をとがらせる。
とはいえ、熟練の網さばきはまだまだ健在。体をひねって「よっ」と網を放ち、バサァッと大輪を広げる。「頭じゃのうて、体が勝手に覚えちゅうがよ。たまらんばあ好きやき」と目を輝かせ、声を弾ませた。
釣り人仲間からは「物部川の生き字引」と慕われる寺村さん。同漁協の松浦秀俊組合長(65)も「川のことをよく知っていてアドバイスをくれる大先輩。マナーが悪い釣り人には、厳しく注意もしてくれる。ありがたい存在です」と話す。
「天気が良うて、えい風が吹きよったら漁に行きとうてたまらんなる。中毒みたいなもんよ。ハッハッハッ」と寺村さん。まぶしい笑顔はきっと、子どもの頃のままだ。(小笠原舞香)
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人のため、地域のためにお世話したり、自分の楽しみに没頭したり。高知県内のシルバー世代は、はつらつと人生を満喫中。人生100年時代、これからもお達者で―。