2021.06.26 08:33
街角に「おでかけ図書館」高知・香美市で広がる 美容室、郵便局…27カ所に
香美市内の事業所や公共施設で本を借りられる「おでかけ図書館」が、じわり広がっている。半世紀以上続く市立図書館の取り組みで、現在27カ所で〝開館〟。病院帰りや買い物ついでにふらっと立ち寄れるミニ図書館が、街角に点在している。
美良布商店街(同市香北町)の「ようこ美容室」。店主の門明和子(ようこ)さん(75)が、料理本を手にした常連客と談笑していた。3年前、客の勧めで本の貸し出しを始め、店内のラックには書籍や雑誌約15冊が並ぶ。女性客が多いため、ジャンルは食や健康、園芸などが中心だ。
カット中に読んだり、退店時に借りたりと、利用の仕方はさまざま。常連客の女性(80)=香北町猪野々=は「料理の本が好きで、デマンドバスが来るまで店で読ませてもらいゆう」と笑う。
同事業は遠方で図書館に行けない人のために1965年、旧物部村でスタート。90年代初めごろまでには村内10カ所に開設された。
市町村合併を経て、近年は土佐山田、香北地域でも拡大。図書館本館が来秋の新築移転で蔵書を増やせるため、より気軽に本に親しんでもらおうと同館が呼び掛け、カフェや病院などにも広がった。
現在は土佐山田10カ所、香北8カ所、物部9カ所で運営。同館が選書した15~130冊ほどが配本され、2~4カ月ごとに入れ替わる。施設側からのリクエストも可能だ。
現本館に近い土佐山田町東本町5丁目の「聖建築研究所」。主宰する山本恭弘さん(77)は「本館の移転で商店街のにぎわいがなくなるのが寂しい」と4月、敷地内のギャラリー「樹下(こした)の舎(や)」に開設した。文学作品や絵本など約100冊を並べ、親子連れや学生らが多く立ち寄っているという。
2年前に開設した香北町の永野郵便局。月に延べ10人ほどが利用するそうで、吉村淳子局長(58)は「本を借りるために来てくれる人もいて、会話が弾む」と喜ぶ。
市立図書館の門脇真里館長は「本を通じた利用者や地域とのつながりを大事にしたい。図書館を身近に感じてもらう機会になれば」と話している。(小笠原舞香)