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2021.03.01 08:00

【原発避難判決】国は責任を認めるべきだ

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 東京電力福島第1原発事故から間もなく10年。古里での暮らしを奪われた避難者の苦しみや憤り、悲しみに応える判決と言えよう。
 福島県から千葉県に避難した住民ら43人が損害賠償を求めた集団訴訟で、東京高裁が国の法的責任を認める判決を言い渡した。
 国が東電に津波対策を命じず、規制権限を行使しなかったことを「違法」と判断した。昨年9月の仙台高裁に続き、高裁段階で国の責任を認めたのは2例目である。
 国には原発に対して適時、適切な安全規制を実施する責任がある。国は重く受け止めるべきだ。
 判決は、東電にだけ賠償を命じた一審千葉地裁判決を変更し、国と東電に計約2億7800万円の損害賠償を命じた。避難生活の苦痛に対し慰謝料も命じ、生活環境の基盤が失われたことへの精神的損害についても賠償すべきだとした。
 避難者の訴訟は全国で30件あり、高裁判決は3例目。今年1月の東京高裁判決は国の責任を否定した。
 争点は、巨大津波の襲来を事前に予見し、対策を講じていれば事故を回避することができたかどうかだ。
 予見可能性の前提とされるのが、2002年に政府の地震調査研究推進本部が公表した「長期評価」である。三陸沖北部から房総沖の領域で、「過去400年にマグニチュード(M)8級の大地震が3回発生しており、133年に1回の割合で大地震が起こる可能性がある」と、東北太平洋沿岸への大津波襲来を警告するものだった。
 東京高裁は長期評価は科学的信頼性があるとし、「国が考慮しないのは著しく合理性を欠く」とした。原発の敷地高を超える津波が到来する危険性は認識でき、国が東電に命じ、津波対策が取られていれば「影響は相当程度軽減され、全電源喪失の事態には至らなかった」と、事故との因果関係を認めた。
 常識的に考えてうなずける内容である。未曽有の事故が「人災」であったという思いを一層強くする。
 今後も集団訴訟は続き、最終的には最高裁が統一判断を示す見通しだ。ただ、避難者はこの10年苦しんできた。これ以上、裁判を引き延ばすのではなく、国と東電は責任を真正面から認め、避難者の救済に取り掛かるべきではないか。
 ここに来て、原発の安全神話が「再来」したとの指摘もある。政府が「世界一厳しい」とうたう原発規制を導入し、社会が「もう事故は起こらない」と思考停止に陥った―。民間有識者の検証委員会が報告書をまとめた。
 安全神話の再来など、決してあってはならない。第1原発事故は、取り返しの付かない原発事故の恐ろしさを知らしめた。その後の廃炉作業や汚染水処理の問題も地元に重くのしかかっている。
 今も約4万2千人が避難生活を続けている。体調悪化や自殺による震災関連死は、避難が長引く福島県が6割を占める。終わらない福島の悲劇を忘れてはならない。

高知のニュース 社説

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