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2021.02.25 08:00

【愛知署名偽造】不正の構図の徹底解明を

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 住民が地方行政を監視することは大切であり、リコール(解職請求)は有権者の意思を直接行政に反映させる手段となる。ただし、厳格に行われ、公正性が維持されなければ大きな混乱を招いてしまう。
 愛知県の大村秀章知事のリコール運動を巡る署名偽造問題で、愛知県警は地方自治法違反の疑いで強制捜査に乗り出した。県内の各市区町村の選挙管理委員会を家宅捜索し、運動事務局が選管に提出した署名簿の押収を始めた。
 不正は許されない。間接民主制を補完する直接請求制度の根幹を揺るがす事態であり、事実関係の徹底解明を期待する。
 リコール運動は、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で展示された昭和天皇に関する映像作品などを美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長が問題視し、実行委員会会長を務めた大村氏の責任を問うとして主導した。名古屋市の河村たかし市長も支援した。
 各選管に提出した署名は約43万5千人分で、住民投票実施に必要な法定数の半分ほどにとどまった。高須氏は健康悪化を理由に運動の終了を表明している。
 県選管の調査では、提出された署名の8割超が無効と判断されている。その多さにまず驚く。そのうち9割ほどが、複数の人物が何人分も書いたとみられる筆跡だった。既に亡くなった人の署名も約8千人分あり、署名集めを担う「受任者」になっている事例もあるというから、随分と荒っぽい対応だ。
 署名数が法定数を下回った場合、通常は選管による署名の審査は行われない。しかし、不正があったとの指摘を受けて調査に乗り出し、その結果に基づいて県選管が県警に告発した。制度の根幹に関わる問題であり、再発防止の観点からもこうした姿勢は重要だ。
 リコール運動を巡り、名古屋市の広告関連会社が事務局の指示でアルバイトを募集し、佐賀県内で他人の氏名や住所を書かせたとの疑惑が浮上している。数百万円で請け負ったとの報道もある。誰がどういう指示系統で行ったかを明確にする必要がある。
 バイトの動員は、運動が実施期限を迎える時期に当たるようだ。署名が低調だったため水増ししたとみられる。署名審査が行われないとの判断から、実績誇示へ膨らませたとの見方もある。高須氏、河村氏らは関与を否定している。
 リコール制度は、地方自治が民意に基づいて運営されるよう、有権者が直接権利を行使する。もちろん無条件に権利行使できるわけではなく、多数の住民の意思に基づいて請求されるものだ。それを偽造するなどあってはならない。
 この制度を巡っては、署名の必要数や収集期間、住民投票の成立要件などさまざまな論点がある。議論を重ねて、制度をより良いものにしていかねばならない。不正は制度の否定であり、民主主義の根幹を揺るがせてしまう。

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