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2020.11.26 08:40

ただ今修業中 スナック店長 田中愛彩さん(33)土佐市

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「リピーターが増えてくれたらうれしい」と話す田中愛彩さん(土佐市高岡町乙のスナック「とんぼ」)


土佐市への感謝胸に
 土佐市中心部にある小さなスナック「とんぼ」。週末には、1軒目を終えた常連客らがほろ酔い気分で続々と集まり、店内のあちらこちらで朗らかな笑い声が広がる。

 今年3月から、ただ一人のスタッフとして店を切り盛りしているのが店長の田中愛彩さん(33)。お酒は一滴も飲めないそうで「まさか自分がこの仕事をするなんて、思ってもいなかった」と笑った。

 ◆

 出身は大阪市。大学を卒業し、2009年に印刷会社に入った。待っていたのは、営業に汗を流す日々。「もっときらびやかな世界を見たい」。一念発起して13年夏、バルーンアートを扱う名古屋市の会社に転職した。

 イベントでは風船で動物や剣を自由自在に作り、結婚式では割った風船の中から小さな風船が飛び出す仕掛けなどで演出し、場を盛り上げた。楽しかった半面、不規則な生活に悩まされた。そんな時に目にしたのが、土佐市の地域おこし協力隊員募集。「フェイスブックで見て、当時のメンバーがすごく楽しそうにしてたから」と応募した。

 16年9月に着任し、観光振興担当として活動を開始。会員制交流サイト(SNS)で情報を発信しながら、地域活性化に取り組むNPOの設立にも携わった。協力隊の任期を終えた19年4月、NPOの事務局長に就任。その傍ら、市内のスナックで週2日のアルバイトを始めた。

 12月、転機が訪れる。アルバイト先近くにあった「とんぼ」で唯一のスタッフが退職することになり、後任にならないかと誘われた。悩みに悩んだ中、胸の中にくすぶっていた思いに気付いた。「他の協力隊員は市内で店を開いたり、観光協会を立ち上げたりしていた。だけど自分は、土佐市に何も残せてない」。そして今年、「とんぼ」を継ぐと決めた。

 ◆

 自分一人で店を回せるのだろうか、前任者と比べられてどう思われるだろうか…。

 店に立ち始めた3月は、不安でいっぱいだった。すぐさま、さらなる苦境に見舞われる。新型コロナウイルスの感染拡大。4月上旬から1カ月ほど、店を閉めざるを得なかった。

 ただ、前は向いていた。休業している間、得意のバルーンアートで店内を飾ってSNSに写真を載せ、PRに努めた。スライスしたキュウリやトマトしか出していなかった食べ物メニューも、本腰を入れて開発。ナスの揚げ浸しや煮卵、酢の物など、バリエーションを広げた。

 休業明け。新たなメニューを出していくうち、「きょうの総菜、何?」と尋ねられることが増えてきた。「休業中はつらさもあったけど、あの時間があって良かった」。今は笑顔で振り返ることができる。

好きな言葉


 協力隊として来た頃は、任期を終えれば土佐市を離れるのだろうと感じていた。地域でどっぷり活動する中で顔が売れ、たくさんの人が「あいぽん」と気さくに呼んでくれるようになった。「見ず知らずの土地なのに、こんなにも受け入れてもらえるなんて」。想像もしていなかった地域の温かさに、ただただ感謝している。

 「本当に来て良かった。第二の古里です」。土佐市への思いを胸に、きょうも客を迎え入れる。
 写真・飯野浩和
  文・山崎友裕

高知のニュース 土佐市 ただ今修業中

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