2020.11.23 08:37
教員の同人誌販売、なぜ処分に? ネットで賛否 県の見解は【なるほど!こうち取材班】

営利か趣味か ネットで話題
高知県内の女性教員が漫画の同人誌販売で利益を上げ、公務員の兼業禁止規定に違反するとして県教委から処分を受けたことが、会員制交流サイト(SNS)で話題になっている。「趣味の範囲。処分は厳しすぎる」「ルールはルール」とネット上の賛否は割れるが、そもそも趣味と副業の線引きはどこなのか。何がセーフで何がアウトなのか。
教員は、男性同士の恋愛を描くボーイズラブ(BL)の漫画同人誌を制作。即売会やネット通販を通じて、7年半で約1100万円を売り上げ、約175万円の利益を上げたとして、18日付で戒告処分を受けた。
このことを報じた高知新聞のニュースは19日、ツイッターのトレンド(登場頻度が高く話題性の高い言葉)で全国上位に躍り出て、リツイート(転載)は1万件近くに。賛否が割れる中、「同人活動は趣味の延長線だ」として、教員に同情的な意見が多くみられた。
県教委の処分理由は、営利目的の兼業を禁じる地方公務員法に抵触したこと。ただ、地公法には、「任命権者の許可なしで営利企業を営んだり、事業に従事したりしてはならない」とあるだけで、何をすれば営利活動や副業になるか、明確な線引きはない。
担当部署の県人事課に聞いてみると、「まず大前提として、公務員は副業で副収入を得ては駄目なんです」とぴしゃり。「(取引相手に)便宜を図っているとみられる可能性があるので」とする。
同人誌のケースでは、ネット上に「7年半で175万円なら活動費を考えると赤字」との声もあるが、「販売の継続性と反復性、利益を上げている点などから客観的に見て営利活動と考えられる。ネット通販の活用も判断材料になった」(県教委)という。
では、同人誌でなく、イベントで楽器の演奏を頼まれて報酬をもらった場合は?
県人事課は「依頼を受けて参加した単発のイベントは考慮の余地がある」とし、「常態化しているかどうかが判断のポイント。収益の出る定期演奏会などは副業と捉えられる」と指摘した。
近年は、フリーマーケットアプリなどを活用した物品売買は当たり前に。趣味でアクセサリーなど手芸品を作り、写真を撮ってサイトに上げれば誰でも売れる時代だが…。
同課は「どれだけ継続的、計画的に売っているかによるが、基本的には営利活動」と、これもアウト判定。ただし、家庭の不用品の売却については該当しないとの見解だ。
いずれにしても、継続性や計画性などは「社会通念上の判断」に委ねられ、あいまいさは残る。今回の同人誌のように、本人が「趣味の範囲」と思っていても、処分されて初めてアウトだと分かることもある。
同課は「線引きは難しいので事例ごとの判断になる。公務員はとにかく物に値段を付けて売るとか、報酬を得る場合とかは上司などに相談してほしい」と注意を促す。
一方、公務員には申請すれば副業の許可が出る例外的なケースもないわけではない。具体的には、遺産相続で賃貸し駐車場を引き継いだ▽人を雇用した営農を親から継いだ▽絵本を出版するが利益は寄付に回す―などで、県の知事部局は2018年度に7件を許可したという。(宮崎順一)
