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2020.03.04 08:42

奈半利町ふるさと納税不正問題 贈収賄容疑などで家宅捜索

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奈半利町役場から関係資料を押収する県警の捜査員(3日午後10時15分ごろ、同町乙)

 高知県安芸郡奈半利町のふるさと納税を巡り、奈半利町職員2人と返礼品業者1人を逮捕した高知県警は3日、贈収賄などの容疑で町役場や業者の事務所など約20カ所を家宅捜索した。県警はこれまでの調べで、職員側は親族を業者に雇用させたり、返礼品の加工を請け負わせたりして多額の現金を支払わせたことを確認。入金の一部は対価ではなく賄賂だったとみて追及する。

 奈半利町地方創生課長の森岡克博容疑者(45)、課長補佐の柏木雄太容疑者(41)=いずれも奈半利町内=と、返礼品業者「通成水産」社長の男性容疑者(30)=香南市野市町大谷。

 3人は、2018年11月に森岡容疑者の息子が奈半利町から安芸市に転居したとする虚偽の異動届を安芸市役所に提出した―などとする電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で3日に逮捕された。調べに対し、森岡、柏木両容疑者は容疑を否認し、水産会社の社長は認めているという。

 これまでの調べによると、通成水産は森岡容疑者の息子への給料のほかに、ネット銀行に開設された息子名義の口座に約170万円を入金。森岡容疑者が引き出す姿を確認したという。

 さらに、柏木容疑者の親族らが返礼品業者から加工や梱包(こんぽう)作業などを請け負い、法外な報酬を受け取っていたとみられ、高知県警はふるさと納税を悪用した利益誘導の構図を解明する方針。

 3日の捜索は捜査員約100人態勢で早朝から夜遅くまで行われ、パソコンや携帯電話、返礼品の帳簿などの関係資料を押収した。

町を揺るがした奈半利のエース2つの顔 「ふるさと納税で活躍」「返礼業者癒着の主犯」

地方創生課で机を並べる柏木雄太容疑者=左=と森岡克博容疑者(昨年6月、奈半利町役場)

 高知県安芸郡奈半利町のふるさと納税を巡り、県警に逮捕された奈半利町地方創生課長補佐の柏木雄太容疑者(41)は、人口3千人の町を全国有数の寄付自治体に押し上げた中心人物。「町の未来を担うエース」(奈半利町幹部)と呼ばれてきた。一方、内偵捜査を進めてきた県警は、こうした活躍の裏で返礼品ビジネスに親族らを関わらせて利益誘導を図った「主犯」との見立てを強める。町内に動揺が広がる中、前例のない事件がはじけた。

 「頭の回転が速く、ユーモア満点」「役場を辞めてビジネスした方が稼げる」

 柏木容疑者は周囲からそう評される。ふるさと納税の担当職員として公務員らしからぬ“商才”を発揮。さして特産のない奈半利町で、業者を精力的に回り、返礼品のアイデアを次々に打ち出した。

 米や豚肉、キンメダイなどを組み合わせて「お得セット」を企画し、限定品のタイムセールも。各自治体がしのぎを削るインターネットサイトで「売り方」「見せ方」にこだわり、奈半利町の寄付額は2017年度に全国9位の39億円、2018年度も37億円に上った。

 「現場に足しげく通って、一から面倒をみてくれた」。一緒に汗をかき、特産品の幅を広げてきた柏木容疑者に感謝する返礼品業者は多い。

 柏木容疑者が特に目をかけたのが、水産会社社長の男性容疑者(30)が2016年に設立した「通成水産」だ。柏木容疑者の勧めで起業したとされ、返礼品はカツオのたたきやカニなど数百種。奈半利町の支払総額が20億円に上るトップ業者に急成長した。

 一方、高知県警は2018年暮れ、柏木容疑者と特定業者の癒着情報をキャッチ。ふるさと納税の実務をほぼ一手に仕切る柏木容疑者の周辺や、通成水産など業者からの金の流れをひそかに追跡した。

 その結果、柏木容疑者が通成水産に地方創生課長の森岡克博容疑者(45)の息子を働かせるよう持ち掛けたほか、自身の親族も水産物の加工や別業者での肉の処理を請け負わせ、報酬として多額の現金を払わせていたことを突き止めた。

 県警は2019年8月から関係者に事情聴取。柏木容疑者と森岡容疑者は弁護士を雇ってなかなか調べに応じなかったが、水産会社社長は返礼品の扱いで便宜を受けたかった旨を話したという。社長は逮捕前、高知新聞社の取材にもこう述べた。

 「柏木さんから現金を要求されたことは一度もない。でもその代わり、親族を法外な値段で雇わせ、金が流れる仕組みだった」「警察に来てもらって良かった。たかられるのが嫌で、柏木さんとの関係を切りたかった」

 県警によると、ふるさと納税制度を巡って、公務員が業者との癒着で逮捕されたのは全国で初めて。政府の地方創生策として拡大してきた制度の陰で地域に広がった「闇」はどこまで解明できるのか―。   

「寄付者の信頼損ねた」 竹﨑町長謝罪

職員2人の逮捕を受け謝罪する竹﨑和伸町長=左=と高橋勝副町長(3日午後4時ごろ、奈半利町役場) 

 ふるさと納税を巡って、職員2人が逮捕された安芸郡奈半利町の竹﨑和伸町長は3日、奈半利町役場で記者会見し、「町に寄付していただいた方の信頼を損ね、おわびと反省の念でいっぱいだ」と述べ、高橋勝副町長とともに頭を下げた。

 逮捕された2人の仕事ぶりを問われた竹﨑町長は、地方創生課長の森岡克博容疑者(45)を「明るく、いろんな発想、発案ができる」。課長補佐の柏木雄太容疑者(41)は「前向きで忠実。商品を生み、アイデアを出してくれた」とし、好意的に評価していたと説明した。

 森岡容疑者は1993年役場入り。ふるさと納税との本格的な関わりは、総務課長補佐から地方創生課長になった2019年春からだった。一方、2001年に役場入りした柏木容疑者は2008年度の制度開始当初から一貫して携わってきたという。

 柏木容疑者に権限が集中していたのではないかとの質問に、高橋副町長は「一定、任せた部分は否めない」と返答。

 竹﨑町長も「寄付額を押し上げた功績があり、なかなか担当を代えられなかった。長く携わりすぎたかなという反省もある」。今後の対応を問われると、「現時点で方向性が言える状況ではない」と唇をかんだ。

 同日、役場を訪れた返礼品業者は「奈半利は不祥事が多い」とあきれ顔。役場OBの男性は「制度の本質から離れた『ふるさと納税バブル』に役場が踊らされた気がする」と話した。(高知新聞取材班)

菅官房長官「あり得ない」 総務省 奈半利町処分の可能性も
 安芸郡奈半利町のふるさと納税を巡る事件で、菅義偉官房長官は3日の記者会見で「あり得ないことだ」と批判した。ふるさと納税は、菅氏が総務相だった2007年に構想を打ち出した制度。所管する総務省内でも「国会などで議論が起きれば町の処分もあり得る」との声が上がった。

 総務省の市町村税課には3日午前、高知県から一報があったという。ある職員は「制度が悪用されることは想定していない」と困惑。業者と行政の癒着については「他にも案件が出てくれば町の処分も検討しないといけない」と厳しい表情を浮かべた。

 2008~12年に高知県に出向して総務部長を務めた総務省市町村税課の恩田馨課長は「町側が業者にどんな便宜を図ったのかがまだ分からない。制度特有の問題があったのかどうか、事実関係を確認し対応したい」と慎重に話した。(安岡仁司)

高知のニュース 奈半利町 奈半利町ふるさと納税事件

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