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2004.10.19 07:30

南極の夏 (17) 第2部(9) 責任者 人を使うのは難しい

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金属管を取り付ける宮崎隊員=右端=ら(昭和基地)

 基地を造る素人集団の仕事も大したものだと思う。強風に悩まされながらも、それぞれの建設現場の作業は完成に向け、着実に進んでいた。

 二月に入り、久々にあの穴掘りに苦心した送油管工事現場に行ってみた。地面が凍り、なかなか工事が進まなかった現場はどうなったのか。

■宮崎隊員
 「せーの!」。現場に掛け声が響いた。五人の作業班が直径二十センチほどの金属管を持ち上げ、支柱に取り付けようとしていた。現場には立派な基礎と支柱が幾つも完成していた。

 送油管延長工事は、島の東の燃料タンクから昭和基地中心の発電棟まで一キロ余りを、金属管で延々とつなぐものだ。四十三次隊から五年計画で始まり、四十五次隊は約三百メートル分を担っていた。

 この現場を仕切るリーダーは海上保安官の宮崎健治隊員(41)。顔の三分の一を覆ったひげと、大きなサングラスが彼のトレードマークだ。

 越冬隊の一員で、機械担当。海上保安庁では長年、九州で警備救難の任務に当たってきた。船上の病人を救出したり、密漁船を摘発するなど第一線で活動してきた。

■家族の応援
 その宮崎隊員はずっと観測隊にあこがれてきた。四十二次隊に応募したが次点。年齢制限のため、今回が最後のチャンスだった。

 「応募用紙を家に持ち帰ったものの、悩みました。家族のことが気になって。子どもはまだ十一歳と五歳。でも逆に家族に背中を押されて、決心できたんです」

 土木作業は初めての体験という。しかも責任者だ。「上下関係がある組織ではないので、人を使うのは難しい」。だから自らが率先して作業するしかない。強風が吹こうが、寒かろうが、黙々と作業をこなしてきた。

 金属管は次々と接続されていった。現場を遠くから眺めると、まるで万里の長城のようだった。隊員の熱い思い、家族の応援、現場での汗と涙。いろいろなものが、この基地を造っていくのだろう。

 余談になるが、長崎県出身の宮崎隊員には三歳年上の兄がいて、高知で中学校教員をしているという。「機会があれば、私が元気にやっていることを伝えてほしい」と頼まれた。

高知のニュース 南極の夏 N科学・環境

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