2016.03.15 10:35

小社会 一つ一つの字句を追っているうちに、まるでその場に…

 一つ一つの字句を追っているうちに、まるでその場に居合わせたような気分になり、いつしか粛然となる詩がある。詩人、千家元麿(1888~1948年)の「三人の親子」。

 2人の子どもが、母親に売れ残った餅を買ってほしいとねだる。母親は小さな財布を出しては金額を数える。〈買はうか買ふまいかと迷って、三人とも黙って釘(くぎ)付けられたやうに立っていた〉

 沈黙が続き、こんな結末が訪れる。〈母親は聞こえない位(くらい)の吐息をついて、黙って歩き出した。子供達もおとなしくそれに従って、寒い町を三人は歩み去った〉

 かなり前の作品で、ひとり親かどうかを含めて家族の詳しい状況は分からない。それでいてこの詩が今も胸に迫ってくるのは、日本社会の陰画ともいえる子どもの貧困を連想させるからだろう。

 県内の子どもで厳しい環境で生活しているのは全体の12・4%。県の調査でこんな結果が出た。ひとり親家庭、生活保護受給世帯などの子どもの割合は、全国平均8・0%を上回る。家の経済状況を考えて、高校や大学に行こうか行くまいかと迷う。そして黙って断念…。詩が想起させる結末だ。

 県の調査は負の連鎖をうかがわせる。特に高校卒業後の進学率は、県平均をかなり下回っている。学費、生活費がかさばる大学進学を諦めざるを得ない子どもはどれだけいるのだろう。「高知家の子どもの貧困対策推進計画」の課題の一つが見える。
カテゴリー: 小社会コラム


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