2016.03.15 10:35

【福祉の人材確保】付け焼き刃では駄目だ

 「保育園落ちた。私活躍出来ねーじゃねーか」――。子どもが保育園に入れず、不満をぶつける匿名ブログへの賛同が広がっている。
 子育て中の女性から保育充実を求める多くの署名提出を受けた政府は、急きょ待機児童解消の追加対策の検討を始めた。
 国民のニーズに行政が応えるのは当然だが、待機児童の解消は長年の課題だと政府も認識していたはずだ。付け焼き刃の対策で批判をかわそうとしても、効果は限られる。
 政府は昨年11月、安倍政権が掲げる「1億総活躍社会」実現の一環として、2017年度末までの保育の受け皿整備目標を50万人分に引き上げる方針を発表した。
 しかしいくら受け皿としての施設整備が進んでも、子どもの入園を希望する人が増え、待機児童は増える傾向にある。今年4月現在の待機児童は2万3千人を超え、5年ぶりに増加した。
 さらに深刻なのは保育士の人手不足だ。保育士の月給は約22万円で全職種平均より約11万円低い。受け皿の整備が進んだとしても、担い手となる人材が定着しないのでは、問題の根本的解決にならない。
 冒頭のブログは、これら未解決の構造的問題が長年にわたって放置されてきたことへの不満が噴き出たものだろう。安倍首相が「本当かどうか確かめようがない」と答弁したとたん、抗議が殺到した。
 首相は国会答弁で、「政権交代前の倍のスピードで受け皿づくりを進めている」とも述べている。だがそもそも、政府が「待機児童ゼロ」を打ち出したのは、2001年の小泉政権時代にさかのぼる。
 十数年の自公政権による対策を棚に上げ、ことさら民主党政権時代と比較するのは筋違いだ。かえって今夏の参院選をにらみ、批判をかわそうという狙いがすけて見える。
 政府は従来、保育士や幼稚園教諭の給与を5%引き上げる方針だった。15年度分から平均3%の引き上げを実施しており、追加対策では残る2%分の引き上げを検討する。財源には消費税増収分を活用する。
 これに対して民主、維新両党がまとめた保育士の処遇改善案は、給与を月額1万円引き上げる。政府の検討案よりは月給は上がるが、実現しても低賃金に変わりはない。
 県によると昨年10月時点の推計で、高知市を中心に約150人の待機児童がいる。大都市圏の問題と高をくくってはいられない。
 人材不足、離職率の高さなど、保育士の問題は介護職員にもそのまま当てはまる。福祉の現場の人材難は以前から予測できたのに、国は対応を怠ってきた。
 施設整備も大事だが、欠けているのは「人」への投資だ。福祉の現場のマンパワー確保には、「数」の問題だけでなく、「質」を高めることが求められる。段階的に給与を上げるにしても、確かな財源が必要だ。その点も含めた根本的な解決に向け、国会の徹底論議を求めたい。
カテゴリー: 社説


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