2016.03.13 14:02

2016年度に高知県内へき地医師4人減 現場の負担増を懸念

医療体制の悪化に不安を口にする沖の島の島民ら(高知県宿毛市沖の島のすくも湾漁協弘瀬出張所)
医療体制の悪化に不安を口にする沖の島の島民ら(高知県宿毛市沖の島のすくも湾漁協弘瀬出張所)
 高知県内のへき地医療機関に医師を派遣している「高知県へき地医療協議会」所属の医師数が2016年度、4人減の29人になる見通しとなった。この影響で、嶺北中央病院(長岡郡本山町)に派遣される内科の常勤医が7人から5人になるほか、梼原病院(高岡郡梼原町)では5人から4人に、大月病院(幡多郡大月町)も4人から3人にそれぞれ1人ずつ減る。

 高知県内のへき地医療機関のうち、9市町村の4病院・6診療所の医師は、関係市町村と県、自治医科大学出身医師らでつくる高知県へき地医療協議会(1986年設立)から派遣されている。所属の医師は現在、研修医を含めて33人。

 2016年度の所属医師数の増減を見ると、3人が家庭の事情などで高知県へき地医療協議会から離れる。高知県との協定で大阪医科大学から嶺北中央病院に派遣されている2人も、大学側の意向で2016年度から高知県内の別の病院で勤務することになった。

 高知県国保連合会の派遣2人も退職するため「7人減」となる。研修を終えた若手医師ら「3人増」を見込んでも全体で「4人減」になるという。

 嶺北中央病院の高橋清人事務長は「外来診療など患者に直接の影響はない」と話しつつも、「当直を担う人数が減り、現場の負担が増す」と懸念する。

 梼原病院は「非常勤医師の応援も受け、診療体制を維持したい」、大月病院は「患者に迷惑を掛けない診療予定を組む方針」としている。

 このほか、二次的な影響もある。大月病院などから週4日、医師派遣を受けている沖の島へき地診療所(宿毛市)は診療時間を短縮する。

 高知県健康政策部の家保英隆副部長(医師確保・育成支援課長)は「患者数が少ない診療所などでは、診療日や時間を見直さざるを得ないケースもある。情報通信技術の活用などで医師不在を補い、住民の不安解消に努める」と話している。


【解説】 へき地医師減  問われる地域医療維持 若手確保に明るい兆しも

 高知県のへき地医療はここ30年、「高知県へき地医療協議会」が支えてきた。現在、医師の派遣先は県内10の病院・診療所。医師、高知県、市町村の三位一体でへき地の医療体制を守る仕組みは「高知方式」と呼ばれるが、近年はそれも綱渡りの状態だ。

 高知県へき地医療協議会所属の医師は2007~2012年度、34~36人で推移。それが2013年には32人、2014年度には30人へと減少した。2015年度は、高知県が協定を結ぶ大阪医科大学から派遣を受けるなどし、34人(2015年12月に1人減)を確保したものの、減少傾向は続いている。

 へき地医療を担う自治医科大学出身の医師は、卒業後9年間のへき地勤務の義務を終えた後、専門医資格の取得を希望して退職する医師が少なくない。結婚、子育てなどの理由でへき地を離れるケースも目立つ。

 一方、高知県内では明るい兆しもある。高知県が関係機関と連携し、医師確保に力を注いだ成果が見え始めたからだ。

 2016年度に高知県内で採用される初期臨床研修医は、過去最多の60人規模になる。研修を終えた医師の県内定着率も2015年度は最高の約9割。高知県から奨学金を受けた医学生はこの春以降、毎年30人規模で卒業し、研修を経て地域医療を担う見通しだ。

 高知県は若手医師の育成に向け、2017年度から始まる新たな専門医制度を見据えた態勢づくりも進める。具体的には、若手医師が中央部と郡部で交互に勤務する態勢を後押しし、郡部の医師確保と専門医資格取得が両立できる仕組みをつくる。

 医療体制の維持確保は、高知県の大テーマである人口減少にも影響する。住民の不安や懸念に配慮しつつ、地域に出た若い医師をどう育み、地域の医療をどうかたちづくっていくかが問われている。


「これ以上の後退やめて」 沖の島 診療時間短縮に悲鳴

 高知県宿毛市沖の島で3月11日、宿毛市立沖の島へき地診療所の診療時間短縮に関する説明会が開かれた。沖の島へき地診療所は大月病院(幡多郡大月町)などから医師の派遣を受けており、4月から大月病院の常勤内科医が4人から3人に減ることに伴い、診療時間を変更せざるを得なくなった。悪化する島の医療体制に島民からは「これ以上の後退はやめて」と、やり場のない声が漏れた。

 沖の島には母島に診療所、弘瀬には出張所があり、2013年度までは「高知県へき地医療協議会」派遣の駐在医1人がいた。

 しかし、高知県へき地医療協議会の医師が減ったため、2014年度からは、大月病院や幡多けんみん病院(宿毛市)などが医師派遣の日を「火・水曜」「木・金曜」という1泊2日の2回に切り替えた。この結果、夜間を中心に医師不在の時間が増え、島民から不安の声が出ていた。

 11日は、宿毛市の中平富宏市長や大月病院の橋元球一院長のほか、高知県の医師確保の担当者が島を訪ね、島民約50人に診療時間の変更案などを説明した。

 それによると、大月病院の医師の減員が影響し、島に医師が来る定期船は「朝の便」から「午後の便」になる。これに伴い、午前9時だった火曜と木曜の診療開始は午後4~6時になるという。

 平日は市の看護師がおり、医師不在時はインターネットを活用した診察も行っている。

 しかし、複数の島民によると、高知県や高知県へき地医療協議会は駐在医がいなくなる際、医療体制がこれ以上悪くならないことを約束したという。

 これについて県側は取材に「医療日数は減らしていない。約束は現時点では守っている」と説明した。

 小学生の娘がいる増本命さん(35)は「常勤医がほしいけど、他の地域もいないからしょうがない。(2年前に)常勤医がいなくなった時もショックでしたが、一島民が騒いで動くような問題じゃない、と思ってしまう」と話した。

カテゴリー: 医療・健康ニュース


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