2016.03.12 16:59

学生が地域に出る意味は? 高知市で会議やフォーラム

活動のやりがいや課題について発表する「中山を元気にし隊」のメンバー(高知市の高知会館)
活動のやりがいや課題について発表する「中山を元気にし隊」のメンバー(高知市の高知会館)
 年度末は、新たな1年を展望する時期でもある。それは、地域に入って活動する学生たちも、学生を受け入れる地域にとっても同じ。高知市内ではこのほど、地域と大学の関係性を考える二つの会議が開かれた。一つは、学生グループの代表らが地域での取り組みや次年度への目標を語り、刺激し合った「地域協働ネットワーク会議」。もう一つは、集落活動センター4カ所の代表者らが出席した「地域活性化フォーラム」。そこで出た話の中から、学生による地域活動の意義や課題を抽出する。

さまざまな学生団体によるポスター展示や活動紹介も行われ、高校生たちの関心を集めた
さまざまな学生団体によるポスター展示や活動紹介も行われ、高校生たちの関心を集めた
学生は愛着と危機感を糧に 「人の温かさ発信したい」

 「地域協働ネットワーク会議」は高知大学が3年前から毎年開いている。高知県内の大学生による地域活動が多彩に広がっていることを受けて、今回は高知県立大学、高知工科大学と共催する形で「学生が語る『地域に関わる』ということ」をテーマに据えた。

 登壇したのは、次の3団体のメンバー。

 安芸郡安田町の中山地区で、特産の自然薯(じねんじょ)栽培や地域おこしイベントに関わる「中山を元気にし隊」(高知大学)。

 早明浦ダムを軸にウオータースポーツや自転車のイベントなどに参画する「さめうらラバーズ」(高知工科大学)。

 高岡郡中土佐町大野見の特栽米の分析やPR、販促に協力し、米食文化の発信にも努める「COME☆RISH」(高知県立大学)。

学生とのつながりも交えて、集落活動センターの取り組みについて語り合うパネリストたち (高知市の高知県公立大永国寺キャンパス)
学生とのつながりも交えて、集落活動センターの取り組みについて語り合うパネリストたち (高知市の高知県公立大永国寺キャンパス)
 学生たちは活動をしている理由について、異口同音に「地域に行った時に人の温かさを感じた。その魅力を発信したい」「もてなしへの感謝を行動で示したい」「他にない、どこか懐かしい風景に愛着がある」などと語った。「中山を元気にし隊」の女子学生は「森の中に森林鉄道が残る光景が物語の世界のように見えて、観光資源として使えたら面白いのではないかと思った」とも。

 「さめうらラバーズ」代表の細川壮司さん=3年=は早明浦ダムの地元、土佐郡土佐町の出身。楽しいことを見つけて地域を好きになる「ラバーズ=愛好家」と銘打った活動の陰に「地元では保育園も小学校もなくなった。さらに自分の高校までなくなってしまうのは嫌だ。このままだと町一つなくなってしまうかもしれない」との危機感があると明かした。

 「その現実を何とかして変えたい」とした上で「苦しいことでなく、楽しいことで地域を元気にできる」。他県出身の同窓生や、他県の大学の学生、地元の中高生が交流するイベントを実施した実績を踏まえ、次の1年の目標について「頑張っている後輩たちと一緒に地元をPRできる場所をつくっていきたい」と目を輝かせた。

高知県立大生たちが地域の特性を盛り込みながら考案した健康体操を披露する場面もあった
高知県立大生たちが地域の特性を盛り込みながら考案した健康体操を披露する場面もあった
 活動を始めてからの変化や意義について、「中山を元気にし隊」代表の田中結理さん=3年=らは「違う年代の人と話すのに抵抗がなくなった。自分たちのやりたいことができるからこそ、アポイントを取る、締め切りを守ることの大切さを知った」「自分で考えて動くようになった」と指摘。

 「COME☆RISH」代表の旭形ひなのさん=2年=は「小学生への食育指導や、食堂イベントでの企画運営、大量調理の体験を通じて、管理栄養士として将来働くために重要になる能力について、多くのことが学べる」。さらに地域への波及について「さまざまなイベントで学生が地域食材を使うことで、地域に誇りを持ってもらえる」「学生に触れることで刺激を受け、自信をもって自分たちのお米をPRしてもらえる。一緒に活動を始めてから『自分たちも本気になった』との言葉をいただいた」と報告した。

 地域との協働について、「さめうらラバーズ」の細川さんは「地域に入って楽しんで、3年、4年後に大学を卒業してありがとう、で終わるのではなくて、いかに共存し、住む人たちの気持ちになることを考えるか。それが自然と、地域の人と協働できるきっかけになるのではないか」と強調。

 「COME☆RISH」の旭形さんは、会場に集った地域の人々に向けて「学生にしてほしいことをぜひ提示してください。思ってもいないアイデアがさらに生まれるかもしれない」と呼び掛け、それを実現するために「情報発信、連絡手段の確保をお願いしたい。大野見の農家の皆さんはWebサイトもメールも使いこなせるようになっている。学生は地域からの発信を歓迎している」と述べた。
 
 会議にはこのほか、各大学から計7団体の学生団体も参加し、防災やまちのバリアフリー化、棚田文化の発信、地域食材の販促、読み聞かせなど、個性的な活動内容をポスターにして紹介。聴講者と質疑応答もした。会場には高校生も多く訪れ、追手前高校の男子学生は「地域おこしに興味がある。具体的な活動が聞けて、イメージが湧いた」と話していた。

住民は刺激と元気もらう 「気概持ち課題解決を」

 もう一つの「地域活性化フォーラム」は、高知県立大学が開催している。

 先ごろ開かれた第5回のテーマは「集落活動センターを軸とする住民と大学の共生型地域づくりの可能性」。長岡郡本山町の汗見川地区、安芸市の東川地区、幡多郡三原村、南国市稲生地区にそれぞれある集落活動センターと、高知県中山間地域対策課から代表者らが集った。

 高知県中山間地域対策課の中村剛課長は高知県の支援で設立が進む各地の集落活動センターについて「箱物づくりではなく、住民が主体となって地域の課題を見つけて解決する『仕組みづくり』」に主眼を置いていると説明。こうした施策展開について「誇張でなく、中山間対策の“一丁目一番地”という気概でやっている」と強調した。

 各集落活動センターの代表者らは、地域の特産品を生かした加工品づくりや、交流人口拡大を目指した自然紹介ツアー、住民の健康づくりなどの活動を紹介。活動に参加している学生たちへの期待にも言及した。
  
 汗見川活性化推進委員会の山下文一会長は「地域の自然を取り入れた健康体操を高知県立大生につくってもらい、高齢者が生き生きとした表情になった。学生さんが来る時はまた連絡して、と明るく楽しい雰囲気になってきた。それが一番印象に残っている」。集落活動センターを通じて、住民活動のマンネリ化を打破したいと思っていたといい、「大きな効果が出てきた」とした。

 正式な開所式を2016年1月に迎えたばかりの三原村集落活動センター推進協議会の宮崎俊雄会長は「数年前から民具調査、言語調査に入ってもらっている」と大学との学術的なつながりを披歴。高齢化社会を視野に入れた交流にも触れて「高齢化はどんどん進んでいる。学生さんの力を借りながら、活性化につなげていきたい」と将来を見据えた。

 東川地域おこし協議会の有沢俊明会長は「山の人間は交流に飢えている。地域の中へ柔軟な発想ができる学生さんが入ってくれることで元気をもらっている」との受け止め。
 聴衆約50人の中には討議に熱心に耳を傾ける学生もおり、「チーム稲生」集落支援員の清水歩未さんは「地域で学んださまざまなことを、授業や大学の活動としてだけでなく、自分の住んでいるところ、実家のあるところでも実践してほしい。そうしてもらうことが地域活性化の第一歩。学生が活動に参加して嫌だという地域はない」と要請した。

 コーディネーターは、高知県立大学地域教育研究センターの地域課題研究部会長も務める田中きよむ・社会福祉学部教授。自ら率いるゼミや学生団体と地域との交流も挙げながら「大学、学生も地域と一緒になりながら、共に生きる関係づくり、地域活動を進めていきたい。若い人のアイデアやエネルギーを生かしながら次の高知県をつくっていければ」と締めくくった。

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カテゴリー: 社会教育大学特集教育


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