2016.03.10 15:38

高知市の「シキデン」がファンの熱望により営業継続し移転

「私以上に店に思い入れのあるお客さんに支えられています」と話すシキデンの式地秀豊社長(高知市北本町3丁目)
「私以上に店に思い入れのあるお客さんに支えられています」と話すシキデンの式地秀豊社長(高知市北本町3丁目)
 高知市のオーディオ専門店「シキデン」が3月12日、創業以来、多くの人に親しまれた北本町3丁目の店舗での営業を終える。「閉店は困る」というファンの声に押され、社長は高知市郊外で店を続けることを決めた。店は小さくなるが、音楽と音質にこだわる人たちの熱い思いが“音の殿堂”「シキデン」を存続させた。

 現在の「シキデン」は1970年にオープンした。開店当時、国内はオーディオブームを迎えていた。「ステレオ」と呼ばれ、スピーカー、アンプ、レコードプレーヤーなどの単体機器をそろえて楽しむことが流行する。

 創業者である義父の仕事を引き継ぎ、2代目の社長を務める式地秀豊さん(66)は「当時の中学生の一番欲しいものはステレオでしたからね」と振り返る。

 店は活況を呈していた。入学シーズンには家族連れ、ボーナス時にはサラリーマンでにぎわった。

 この頃、カセットテープも発売された。音質の良いFM放送をテープ録音する「エアチェック」という文化も生まれる。レンタルレコード店も登場して、良い音で録音するための高価なカセットデッキもよく売れた。しかし、ある商品の発売で時流が変わる。

 「ウォークマンが発売されて、すべてが変わりました」

 式地社長は言う。ソニーがポータブルカセットプレーヤー「ウォークマン」を発売したのは1979年。機器を屋外に持ち出してステレオヘッドホンで聴くという新しい文化を創造した。

 さらにミニコンポと呼ばれる安価なオーディオセットも続々発売されて、客足は専門店から家電量販店に流れた。そして今はスマートフォンで音楽を聴く時代となった。

 「やめたら困る」

 「店の土地の売却も決まって、借入金の清算もできる見込みとなった。これできれいに終わらせることができると思っていたんです」

 しかし、店には40年以上も通うオーディオファンたちがいた。

 「やめたら困ると、ずいぶんたくさんのお客さまから言われましてね」

 閉店を知らされて、大粒の涙をこぼした男性もいた。この店でステレオを買い、そして日本の高級オーディオメーカー「アキュフェーズ」に就職した50代男性だった。

 40年来、店に通っている山中康男さん(65)=高知市重倉=は「ここがなくなるのは残念ですね。大学生の時にスピーカーの試聴に来たのが初めてのことでした。会社員になってから、タンノイのスピーカーを買いました」と振り返る。

 店は高知市長浜に移転して3月30日にオープンする。売り場は現在の4分の1に縮小し、中級以上のオーディオを扱う専門店として再出発する。

カテゴリー: 主要文化・芸能高知中央


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