2016.03.06 14:35

小社会 1960年に池田元首相がぶち上げた「所得倍増」計画…

 1960年に池田元首相がぶち上げた「所得倍増」計画。後に日本の高度経済成長を象徴する標語となった。が、当初のネーミングは「月給倍増」計画だった(岸宣仁著「経済白書物語」)。

 名称変更を進言したのは当時、首相の秘書官をしていた宮沢元首相。「月給という言葉はサラリーマンだけを連想させる。農業や事業者所得も含めて所得倍増にしたらどうかと考えた」。言葉はイメージが大事なときもある。

 きのう日本の国会に当たる会議が始まった中国も、標語をよく使う国だ。昨年の今ごろから「小康社会」という4文字を、新聞で見るようになった。2020年までに国内総生産(GDP)と国民の平均収入を、10年比で倍増させることを目指す。

 中国版「所得倍増」かとも思うが、単純に当てはめていいとは限らない。「小康社会」の意味するところは、「いくらかゆとりのある社会」。なんだかつつましい。目標は農村部に集中する約7千万人の貧困層を一掃することだという。

 GDPで既に世界第2位の中国は、かつての日本のような高度成長の実現を目指していない。安定成長の軌道に乗せられるかどうかは、世界経済の行方も左右する。格差を解消して、そこそこのゆとりを生み出せるかどうか。

 もし「小康」が一部の富裕層や腐敗官僚だけを連想させるなら、多くの国民の不満が募りかねない。標語の持つイメージの力は半面、恐ろしい。
カテゴリー: 小社会コラム


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