2021.10.23 08:00
【ミャンマー】軍政は暴力の即時停止を
軍政側は、仲介に乗り出した東南アジア諸国連合(ASEAN)の特使受け入れも拒否。人権団体によるとクーデター以降、軍の弾圧で1200人近くが殺害され、戦闘での死者も増えているという。国際社会の連携で暴力の即時停止を迫り、負の連鎖を断ち切る必要がある。
民主化の歩みは2月、突如として途絶えた。アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)は、国軍の政治的影響力を保証する憲法の改正を公約に掲げて総選挙に圧勝。第2次政権の発足当日、国軍がクーデターを起こした。
全権を握った軍政はスー・チー氏ら政治家のみならず多くの著名人を拘束し、反軍政デモを力で抑え込んで犠牲者は増え続けた。
国軍は影響力の低下を阻止するために政変という暴挙に及んだとみられる。自国民に銃口を向ける軍政のなりふり構わぬ姿勢は、こうした見方を裏付けていよう。
NLDの議員や民主活動家は少数民族とNUGを設立。5月には「国民防衛隊」を創設して国軍への対抗を続ける。少数民族の武装勢力と連携し、地雷攻撃や基地への砲撃などゲリラ戦を展開する。
ただ、国軍の資金力や装備とは比べものにならない。国軍側もNUGをテロ組織に指定。防衛隊の活動が活発な地域に部隊を増派して、掃討作戦を計画しているという。戦闘拡大と、それに伴う人道危機の深刻化を懸念せずにはいられない。
ASEANは臨時首脳会議を開き、軍政側と暴力の即時停止や特使受け入れなど5項目でいったんは合意したものの、その後の交渉は暗礁に乗り上げている。特使とスー・チー氏らとの面会要請を、軍政側が拒否しているとみられる。
合意の不履行を理由に、ASEANは近く開かれる首脳会議に軍政トップのミン・アウン・フライン総司令官を招かないと決めた。軍政への圧力を強める狙いだ。内政不干渉を原則とするASEANにとって、一連の動きは一歩踏み込んだ対応だったといえる。
軍政側は、一部の拘束者の解放に応じたものの「内政干渉だ」と反発を強め、国際的な孤立もいとわない姿勢を見せている。ASEANによる仲介は行き詰まりつつある。
ミャンマーは経済活動の低迷や新型コロナウイルスの感染拡大などに直面し、軍政の限界は明らかだ。力に頼った統治は国民のさらなる反発と憎悪を生んでいく。
国際社会もASEANに足並みをそろえる形で関与を強め、正常化に向けた対話の糸口を見いださなければならない。日本は主要な支援国であり、国軍とも独自のパイプを持つとされる。主体的に働き掛け、自制と民政への復帰を促したい。