2024年 03月28日(木)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知龍馬マラソン2024写真販売
高知新聞PLUSの活用法

2021.10.22 08:00

【2021衆院選 防衛】「専守」の理念を忘れずに

SHARE

 日本の安全保障環境が厳しさを増している。台湾を巡り米中対立が顕在化し、北朝鮮の弾道ミサイル発射など緊張を高める動きが続く。
 こうした情勢に防衛力整備の在り方が問われている。政府は防衛装備や部隊編成の整備目標を定める「中期防衛力整備計画(中期防)」を前倒しして改定する意向を示す。
 今春の日米首脳会談の共同声明は、「台湾」を明記するとともに、同盟および地域の安全保障を一層強化するために日本は防衛力を強化する決意を盛り込んだ。装備品の拡充や宇宙・サイバー空間という新たな防衛領域での能力向上も迫られ、改定で具体化を進めることになる。
 米国は外交安全保障政策の焦点を中東やアフガニスタンから中国に移す動きを強めている。米英豪によるインド太平洋地域での安保枠組み「AUKUS(オーカス)」を創設した。地域の同盟国との連携強化を図る動きは、日米豪印の枠組み「クアッド」にもつながっている。
 一方、中国の習近平国家主席は長期政権を見据え、台湾統一実現に強い自信を示している。台湾側では、中国が早ければ2025年に台湾海峡周辺の封鎖能力を完備すると予測し、台湾の軍備力増強を訴えた。
 日本の21年度の防衛費は約5兆3千億円と過去最高になったが、中国は20兆円を超える。日本の防衛費の伸びが30年間で1・2倍なのに対し、中国は40倍を上回る。
 限られた予算で対応を迫られる危機意識は改定へ推し進める原動力になる。自民党の選挙公約は、北大西洋条約機構(NATO)が加盟国の目標とする国内総生産(GDP)比2%以上も念頭に、防衛関係費の増額を掲げた。GDPの1%とされた目安の倍増をにらむ。
 しかし、防衛費の大幅増額は周辺国を刺激する。中国は日米連携をけん制している。有事の際には米側の要請により自衛隊が安全保障関連法に基づき、米軍の後方支援に回る可能性がある。日米同盟の一体化で、米中の偶発的な衝突に日本が巻き込まれることも想定される。
 山口、秋田両県に計画した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」はずさんな対応が明らかになり、政府は配備を断念した。代替案として、相手国の弾道ミサイル発射基地などを攻撃する敵基地攻撃能力の保有が急浮上した。結論は先送りされているが、保有を含め抑止力を向上させる新たな取り組みを進めると自民党は訴える。
 反対意見や慎重姿勢の党もある。そもそも保有は憲法に基づく「専守防衛」の理念を逸脱する懸念が拭えない。軍事力を増強する他国とどう向き合うか十分な検討が求められ、合意形成を軽視してはならない。
 沖縄県にある米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設の是非も争点となる。反対の民意は根強く、総工費、工期は当初計画を大幅に上回る。負担軽減の「唯一の解決策」なのか、重要な論点だ。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月