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2021.10.21 08:00

【2021衆院選 外交】独自の立脚地を見定めて

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 「新冷戦」とも言われる米国と中国との対立がさらに激しくなると、日本も巻き込まれてしまうのではないか。こうした想定への危惧は相当に根強いようだ。世論調査では、9割近くが米中対立に不安を感じると答えている。
 軍事的緊張の高まりが日本に降りかかる恐れや、米側から相応の負担を求められることへの警戒感が背景にある。また、貿易摩擦が激化すれば日本経済にも影響を及ぼすとの懸念が挙げられる。
 中国が覇権主義的な動きを強めている。台湾へ軍事的圧力を強め、沖縄県・尖閣諸島周辺では中国海警局船による領海侵入が相次いでいる。一方、中国は最大の貿易相手国であり関係維持が迫られる。
 日本外交は米国との同盟関係を基軸とする。バイデン米大統領が就任して最初の対面式会談の相手が当時の菅義偉首相だったことは、関係性を強めたい狙いをうかがわせた。同時に、新たな役割への期待も込められていたとの見方もできる。
 バイデン氏は中国を唯一の競争国と位置付け、インド太平洋地域の秩序維持に力を入れる。首脳会談の共同文書は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。
 また、日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」の構成など、同盟・友好国との連携に努めている。アフガニスタンからの米軍撤退での失態など精彩を欠く場面があるものの、対中包囲網の強化が進む。
 こうした動きに、台湾を不可分の領土とする立場を貫く中国は反発を強めてきた。米軍などの演習に対抗するような行動も見られる。習近平国家主席は、台湾への軍事的圧力を強化するよう指示している。
 対立が先鋭化しかねない状況だが、一方で双方とも決定的な衝突は望んでいないとも指摘される。輸出入規制や制裁関税問題を打開するため貿易協議を再開し、首脳会談が年内にオンライン形式で開催される見通しとなった。
 香港の民主派抑圧や新疆ウイグル自治区の人権問題、経済安全保障など対立は多岐にわたる。問題の解消は簡単ではなく展開は見通せないが、関係改善へ接点の模索が始まっていることは注目したい。
 来年は日中国交正常化50周年を迎える。関係の安定化を図り、事態打開へ向け積極的に関与する機会でもある。日中関係を模索しつつ、多国間の防衛協力を進める微妙な立場ではあるが、日本が担う役割は小さくないはずだ。
 独自の立ち位置からの主体的な外交で、新たな関係構築に寄与する姿勢が求められている。国民の不安を軽減するために対立緩和へとつなげる重要な論点となる。
 日韓間の歴史問題、北朝鮮によるミサイル発射や日本人拉致、ロシアとの北方領土交渉などに、どうアプローチして新たな展開へとつなげていくのか。山積する課題への向き合い方も問われる。

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