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2021.10.20 08:00

【2021衆院選 経済対策】予算規模ありきに危うさ

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 就任間もない岸田文雄首相は「新型コロナウイルス対策、経済対策の早期実現」を理由に衆院を解散した。任期満了直前だったとはいえ、解散の大義の持つ意味は重い。
 コロナ禍の影響が直撃した飲食店や旅行業を中心に、経済状況は厳しさを増す。その痛みをどう和らげるか。喫緊の課題であるとともに「ポストコロナ」をもにらんだ戦略が求められる。
 日本経済の方向性を考える上で、8年9カ月に及んだ安倍、菅両政権の経済政策アベノミクスの評価は避けて通れない。機動的な財政出動、日銀による大規模な金融緩和、成長戦略のいわゆる「三本の矢」は国民生活に何をもたらしたのか。
 第2次安倍政権が発足した2012年12月末の日経平均株価は1万395円。菅政権の21年2月にはバブル経済期以来、約30年半ぶりに3万円台を回復した。大幅な株高の演出にアベノミクス、特に金融緩和が一役買ったことは間違いない。
 ただ、経済成長は明らかに力強さを欠いた。アベノミクスが始まった12年の指数を100とすると、物価は19年に107・2に上がり、実質賃金は95・6に下がっている。
 そんな分析を公表した立憲民主党はアベノミクスを失敗と断じる。経済統計をみると、少なくとも大企業や富裕層が潤えばその富が中小企業や低所得者にも行き渡るという「トリクルダウン」効果が実感を伴っていなかったのは確かだろう。その後のコロナ禍は国民生活を直撃し、街角経済をむしばんでいる。
 中間所得層の購買力が低下して、国内総生産(GDP)の過半を占める個人消費が振るわない。そんな見方が広がるのも当然だろう。野党各党の公約には「中間層」「分配」を強調し、現金給付策や消費税減税の文言が並ぶ。
 与党の自民、公明両党もその点は変わらない。岸田首相が総裁選で「令和版所得倍増計画」や金融所得課税の強化を掲げたことは、自民党内にもアベノミクス路線そのままの継続に疑問があったことを物語る。だが、公約段階では「分配」を強調しつつもそうした岸田カラーは消え「成長」重視を鮮明にした。
 野党との対立軸は見えてきたが、実現への道筋はかえってぼやけてしまったのではないか。各党による討論会で「分配が先か、成長が先か」という議論もあったが、一体的に取り組む必要性を踏まえれば「空中戦」の印象は拭えない。
 看過できないのは、与野党とも巨額の経済対策をうたう一方、財源が曖昧なことだ。折しも現役の財務次官が月刊誌で発表した財政破綻を懸念する論文が波紋を広げた。
 コロナ禍という非常時に一定の財政出動は必要だろう。そうだとしても新たな借金に依存した予算規模ありきの議論は「ばらまき合戦」の批判を受けても仕方がない。各党には長期的視点に立った財政再建策を示す責任がある。

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