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2021.10.15 08:00

【衆院解散】暮らしをどう立て直す

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 衆院がきのう解散された。衆院選に向け事実上の選挙戦に入った。
 岸田内閣は発足から間もない。岸田文雄首相の所信表明演説とそれに対する代表質問は行われたとはいえ、政権の基本姿勢や具体的な政策が周知されたとは言い難い。
 新たな国家像をどう描き、課題とどう向き合うのか。野党はどういう対立軸を打ち出すのか。各党の厚みのある論戦を望みたい。
 この4年で政権を担った首相は3人になる。安倍晋三首相は長期政権を築いたが健康を理由に辞任し、菅義偉首相は1年余りで退陣した。衆院選では安倍・菅政権の評価とともに、一連の施策の継承と転換を巡り岸田政権が信を問うことになる。
 昨年1月ごろからは、新型コロナウイルス対策が重要課題となった。東京五輪・パラリンピックは1年延期して開催にこぎつけたが、菅政権は対応の遅れや発信力不足が批判され支持率が低下した。衆院選への影響を懸念する声が自民党内で高まり岸田政権誕生へとつながった。
 ワクチン接種が進んだこともあって感染拡大はひとまず落ち着いてきたが、「第6波」への警戒は怠れない。第5波で顕在化した医療提供体制の不備を修正する必要がある。一方で行動制限の緩和など、コロナ後をにらんだ経済活動の在り方も焦点となっている。
 コロナで打撃を受けた経済と暮らしの立て直しを急ぐ必要がある。成長重視の経済政策「アベノミクス」は貧富の差を拡大し分断を生んだと指摘される。岸田首相が掲げる「新しい資本主義」はアベノミクスを基礎とした新しい概念だそうだが、何が違うのかまだ判然としない。
 経済政策を巡り、「成長」とともに「分配」が論点に浮上している。「民主主義の中核である中間層」「1億総中流」という言葉も登場している。それをいかに形成するか、具体的に論じることが必要だ。
 前回4年前の解散は、当時の安倍首相が臨時国会の冒頭に所信表明さえ省いて打って出た。森友、加計両学園問題の疑惑解明を理由に野党が要求した召集を3カ月放置してのことだった。
 今臨時国会の代表質問でも、森友問題が取り上げられている。菅政権でも十分な説明がなされず、岸田政権に引き継がれたことになる。
 そもそも今国会も、コロナ対策のための野党の召集要求はしばらく放置された末、召集される主目的は新首相の指名となった。要求が軽んじられたことは過去にもあり、閉会中審査は開かれてはいる。とはいえ、国会論戦を軽んじる風潮が強まっていることは間違いないだろう。
 言論の府である国会を軽視した強引な手法は認められない。慎重な審議を通した国民の合意形成をないがしろにしては、民主主義の成熟は期待できない。「政治とカネ」問題は尽きず、首相官邸の顔色をうかがう官僚の忖度(そんたく)ももってのほかだ。
 国内外に課題は山積する。選挙を通した論戦は、政治の信頼を回復させる機会でもある。

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