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2021.10.12 08:00

【日大背任事件】不透明な運営が招いた

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 国内最大級のマンモス大学で何が起こっているのか。
 日本大学医学部付属板橋病院の建て替え工事の設計契約を巡り、東京地検特捜部は背任の疑いで、日大理事の井ノ口忠男容疑者と大阪市の医療法人前理事長の籔本雅巳容疑者を逮捕した。
 就職活動中の学生や入学を希望する受験生にも動揺が広がりかねない。捜査の進展が待たれるが、日大の組織統治の在り方が問われているのは間違いない。大学として積極的に真相究明にあたるべきだろう。
 背任事件は、日大が100%出資する関連事業会社「日本大学事業部」が舞台となった。井ノ口容疑者は大学の理事とともに、事業会社の取締役も務めていた。
 逮捕容疑は、病院建て替え工事の設計業者を選定するプロポーザル業務で評価点を改ざんし、都内の設計事務所を選定。日大から送金された着手金のうち2億2千万円を籔本容疑者が出資するペーパー会社に支出させ日大に損害を与えたという。籔本容疑者に見返りとして約1億円、井ノ口容疑者には2千万円超が渡ったとされる。
 事業会社は備品の一括購入や関連事業を行う目的で設立されている。大学の職員が高等教育に専念できるようにするためで、規模の大きい大学では珍しくないという。
 日大の場合、保険代理店事業から自動販売機の管理、食堂の運営まで幅広く展開し、その収益を大学に寄付して還元するシステムだった。
 別法人とはいえ、経営実態は大学とは切っても切れない一体的な関係と言ってよい。ただ、大学側の指導や管理が適切に行われていたかには疑問が残る。
 取締役の井ノ口容疑者は、学校法人トップの田中英寿理事長の側近として知られる人物だ。井ノ口容疑者が田中理事長の影響力を背景に、事業会社を実質的に取り仕切っていたとされる。
 アメリカンフットボール部で2018年5月に起きた悪質タックル問題では、加害選手らに監督の関与がないと証言するよう隠蔽(いんぺい)を図ったと、弁護士による第三者委員会に認定されている。
 大学理事などをいったんは辞任したものの、短期間で事業会社の取締役と大学理事に復帰していた。多くの学生を預かる教育機関として、首をかしげざるを得ない人事だろう。そうした不透明な運営の在り方が、不透明な資金の流れの温床となっているのではないか。
 田中理事長も自宅が家宅捜索を受けた。現時点で関与があったかは定かでないにしても、大学やグループの運営に大きな責任を負う立場であることに疑いの余地はない。悪質タックル問題では公の場での説明を避け続けた。トップとして、これ以上の責任逃れは許されない。
 不祥事でしわ寄せを受けるのは学生や入試を控えた受験生だ。日大はその認識を踏まえた上で、十分な説明と再発防止に向けた取り組みを急ぐ必要がある。

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