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2021.10.08 08:00

【子宮頸がん】予防へワクチン検討を

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 国が子宮頸(けい)がんワクチンの接種を呼び掛ける「積極勧奨」を再開する見込みになった。厚生労働省の専門部会で容認された。
 原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンだ。先進国を中心に100カ国以上で公的接種として導入されている。
 日本でも2013年に定期接種が始まったが、接種後に全身の痛みなどを訴える人が相次ぎ、国は同年に積極的な接種呼び掛けを中止した。
 再開が判断されたのは、ワクチンの安全性や有効性を示す研究データが集積されたことが大きい。科学的根拠のある正しい情報に基づき、接種するかどうかを判断したい。
 国内では、子宮頸がんを年間約1万人が発症し、約3千人が亡くなっている。このがんは「マザーキラー」という別名があり、母親世代である20~40代の患者増加が問題になっている。治療のため子宮を失い妊娠を諦めるケースも少なくない。
 一方で、予防できるがんでもある。今回の判断材料になったスウェーデンの大規模調査では、ワクチン接種で進行性の子宮頸がんになるリスクが大幅に下がることが分かった。特に17歳より前に接種した場合は発症リスクが9割近く低下した。
 国内の定期接種は小学6年~高校1年の女子を対象にしている。効果が高いとされる年代であり、公費で接種が受けられる意義は大きい。成人後に備えたがん対策として、本人と保護者らがよく話し合って検討したい。
 日本の接種率は「積極勧奨」の中止以降、大幅に低下して0~1%台だ。英国などは80%を超えている。世界保健機関(WHO)の専門委員会は「日本は予防できるがんに無防備だ」と名指しで批判している。
 個別に定期接種の案内がされなかったことで、ワクチンの存在自体を知らない人も多い。高知県も今回の判断を受け、接種の勧奨を再開する。接種率が上がり、がん予防につながる効果を期待したい。
 厚労省の専門部会は国内外の調査を踏まえ、中止のきっかけになった接種後の症状はワクチンとの関連性が明らかになっていないとした。
 とはいえ、子宮頸がんワクチンによる健康被害を訴えている人の存在を忘れてはならない。国と製薬会社に損害賠償を求める訴訟の原告は130人に及ぶ。「積極勧奨」再開に対し、原告らは「実態を理解していない」などと反対している。
 ワクチンとの向き合い方が問われている。接種で副反応が起きることや症状に個人差があることは、新型コロナウイルスの感染拡大でよく知られるようになった。
 国は、ワクチンの副反応に対応する医療体制の強化と相談機関の整備を進めていかなければならない。
 「積極勧奨」の中止期間に定期接種の機会を逃した人からは、公費での接種を求める声も上がっている。
 国はそれらの支援策も検討すべきだ。子宮頸がんの早期発見に向けて、積極的に検診を受けるよう呼び掛けていく必要もある。

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