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2021.10.07 08:00

【パンドラ文書】課税逃れへの監視強めよ

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 後ろ暗い資金の流れの一端が明らかになった。
 共同通信など世界の報道機関が連携する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した「パンドラ文書」で、各国の現旧首脳35人がタックスヘイブン(租税回避地)を利用した取引に関与していたことが判明した。
 国内で相次ぐ「政治とカネ」問題も万国共通の悩みと言える。国民に格差是正や汚職撲滅をうたったにもかかわらず、自身の利殖に余念がない。そうした実態では世界中で政治不信が渦巻こう。租税回避への包囲網を急がなければならない。
 ICIJは国際的な汚職や不正を調査報道する組織で、2016年のパナマ文書、17年のパラダイス文書を公表している。
 新文書は、回避地の法人設立や管理を専門とする法律事務所や信託会社など14業者の内部資料1190万件分。各国の政治家や政府高官ら330人以上について、租税回避地とのつながりが判明した。
 英国のブレア元首相は格差是正へ富裕層の課税強化を訴えながら、回避地にある法人を買収。法人所有のビルの取得に伴う税金を免れた疑惑が浮上した。ヨルダンのアブドラ国王も政治家らの汚職に厳しい姿勢を示していたが、フロント企業を介して多数の不動産を購入していた。
 日本の政治家の不正は現時点で確認されていないが、パンドラ文書には多数の日本企業や財界人の名前が載っている。中には海外事業と回避地の法人を組み合わせ、税金ゼロを実現した事例もあった。
 租税回避地は節税や投資だけでなく、脱税や犯罪で得た資金の洗浄(マネーロンダリング)にも使われる。それを可能にするのは低税率に加え、経営者情報の高い匿名性だろう。税率が極めて低い国での法人設立や口座開設は違法ではないにしても、匿名性を利用した取引の不透明さはやはり問題をはらむ。
 回避地に資産を移す環境整備には専門家への手数料も必要で、現実的には大企業や富裕層に限られる。課税逃れの一方で公共サービスを利用すれば、2重に税負担の公平性を損なうことになろう。そのしわ寄せは真面目に納税の義務を果たす一般の国民にこそ及ぶ。
 久しく是正の必要性が指摘されてきたが、国際的な対策は遅々として進んでこなかった。パンドラ文書に基づく報道をみれば、各国の権力者が利用していたことも原因の一つではないか。疑念は拭えない。
 ICIJによる一連の報道もあって、国際的に租税回避への対応を求める機運は高まってきた。経済協力開発機構(OECD)で7月、130カ国・地域が各国の最低法人税率を15%以上とする方針で合意した。
 ただ、国際社会が足並みのそろった対応を実現できるかはまだ予断を許さない。不透明な資金の流れを断つには、報道を通じて各国の国民が租税回避地の闇に目を凝らし、監視を強める必要がある。それが各国の対応を促すことにつながる。

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