2024年 04月26日(金)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2021.10.05 08:00

【岸田内閣発足】国民との対話を忘れずに

SHARE

 自民党の岸田文雄総裁が首相に選ばれ、新内閣が発足した。
 岸田首相は「聞く力」「チーム力」を掲げてきた。新たな布陣の初入閣は13人に上る。
 新設の経済安全保障担当相に小林鷹之元防衛政務官を充てるなど、衆院当選3回の若手の抜てきでも清新さを演出した。派閥が望んだ人事とは異なる対応も見せたようだ。
 子ども政策を統括する「こども庁」創設へ、総裁選で争った野田聖子元総務相を担当相に起用した。世論の反応もにらみ、独自の色合いを出そうとした様子がうかがえる。 
 その一方で、岸田党総裁誕生を後押しした「3A」と呼ばれる3氏の影響も色濃く映し出された。
 松野博一官房長官は安倍晋三元首相側近で、加計学園問題を巡る答弁などで批判を受けている。甘利明幹事長は建設会社からの金銭授受問題で批判を招いた経緯がある。それでも受け入れた意図に厳しい視線を向けられることになる。
 岸田氏は党役員人事でも若手登用を実行しているが、改革姿勢は大きく後退した印象だ。政権への影響力を発揮する構造が変わっただけという冷めた見方も出ている。
 もっとも、総裁選の段階からそうした姿勢はうかがえた。森友学園問題に関し、説明の必要性を指摘しておきながら再調査の否定に転じてしまった。安倍氏への配慮を否定しても、そうは受け止められない。
 総裁選で岸田氏は党改革を公約に掲げた。役員任期の制限を打ち出したことは総裁選の流れを大きく変えた。実行の思いは「1ミリたりとも後退していない」と明言している。
 問われるのは、党内にとどまらず改革への姿勢を貫けるかだ。国会を軽視した安倍・菅政権をどう総括し、どう向き合うのか。ぐらつくようでは政権への批判が高まる。
 喫緊の課題は、新型コロナウイルスの流行「第6波」を見据えた医療体制の強化だ。第5波では病床逼迫(ひっぱく)や自宅療養中に死亡する事態も起きた。菅政権の反省を施策に生かす必要がある。制限緩和による経済活動の本格再開をどう実現させるのかも重要な論点のままだ。助長された社会の分断とも向き合わねばならない。
 経済対策では、年内に数十兆円規模の対策を策定する考えを示す。困窮する事業者への支援や子育て世代の対策を強める必要がある。同時に、財政再建ものしかかる。脱炭素への取り組みは原発・エネルギー問題に関わってくる。
 米政権との信頼構築や日韓関係の修復、経済面で結びつく中国との決定的対立は避けるバランス外交の模索など、外交面の課題も多い。
 「政治とカネ」問題は、参院選広島選挙区の買収事件など丁寧な説明は避けて通れない。日本学術会議会員候補の任命拒否も、やり過ごそうとすれば政権の信頼が揺らぐ。
 国権の最高機関である国会と真剣に向き合うことが基本だ。そこから安倍・菅路線の改革は始まるのではないか。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月