2016.02.27 16:48

高知大地域協働学部がいの町是友地区で人を知り、地域知る

多くの世代が集い、盛り上がったクリスマス会(2015年12月)=写真はいずれも、高知県吾川郡いの町
多くの世代が集い、盛り上がったクリスマス会(2015年12月)=写真はいずれも、高知県吾川郡いの町
「共助の環境」目指す   
 人間関係で最も大事なのは、相手との「信頼」ではないだろうか。気の置けない間柄だからこそ、本音で語り合え、相談もできる。地域を知るのは、そこに住む人たちを知ることに尽きる―。高知県吾川郡いの町是友地区で実習に取り組んだ高知大学地域協働学部の1期生10人はこの半年間、小さな地区のイベントにも積極的に足を運んだ。「住民同士の結び付きを強める」という地区の課題を解決するため、信頼関係を醸成する時間を重ねた。

住民と共に笑顔で植栽作業を行う学生たち(2015年10月)
住民と共に笑顔で植栽作業を行う学生たち(2015年10月)
 「ここは何もないところなんですよ」と是友地区の樋口義博区長(72)は話す。約620人が住む是友地区は、高知市中心部から車で20分ほどの場所にある。JRや電車が走り、スーパーや病院も近く、生活環境は恵まれている。ただ、これといった特産物や外から人を呼べるような大きなイベントもない「ただの住宅地」だと言う。

おしゃべりカフェでは地区の将来などについて語り合った
おしゃべりカフェでは地区の将来などについて語り合った
 地区と高知大生との付き合いは6年前にさかのぼる。住民有志が地区を流れる宇治川沿いの土手をコスモスやシバザクラなどの花々で彩ろうと始めた活動に、高知大学農学部の学生を中心とした学生団体「あぐりーず」が関わり始めた。

 学生らは夏祭りの運営にも関わるなど、折に触れて地区に足を運び、地元住民への報告会も開いた。ただ、樋口区長は当時を振り返り、「学生も年々入れ替わるし、腰掛け程度ではお互いにとって良くない。名前と顔が一致して顔の見える関係になることが必要だと思った」と話す。

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 そうした素地と問題意識がある中で、2015年10月、地域協働学部1期生の地域理解実習は始まった。

 地区の運動会や、シバザクラなどの花の植栽、グラウンドゴルフ大会、クリスマス会、公民館でのおしゃべりカフェ…。学生たちはさまざまな催しや作業にきめ細かく参加した。

 国道33号そばの堤防沿いに住民が整備している「花街道」では、秋の風物となっているコスモスの世話も。学生たちは「地域の人と共に汗を流す楽しさ」を知りながら「どんな風景にしたいか」「どんな地域にしたいか」を聞き取っていく。

 子ども会を中心に、高齢者も参加するクリスマス会では「自分たちが間に立って、世代をもっとつなげることに役立てるのでは」と実感した。

 こうした活動が実習メニューに盛り込まれた背景には、生活環境に恵まれた住宅地であるが故の是友地区の悩みもある。それは、近所付き合いの少なさ。自治会活動に参加する主要メンバーは、50人ほどという。

 そこで、南海地震などの災害の発生時にも、地区の人たちが助け合う活動ができるよう、学生の力を生かして地域づくりへの新たな参加者を掘り起こす「共助の環境づくり」を目指すこととした。

 1月末に大学で開かれた実習の報告会では、学生たちからも「共助」「つながり」を意識した言葉が多く飛び出した。

 「誰と誰が仲良しなのかを登録する仕組みがあり、仲のいい人にイベントに誘ってもらう。是友の共助の仕組みを生かしたい」

 実際、地域のイベントに参加していなかった人に参加を呼び掛けると、少しずつ変化も見え始めたという。

 住民と学生が語り合うおしゃべりカフェでは、住民から「若い人とおしゃべりしたり、地域のことが分かって良かった」「若い人と話すのは苦手だったが、初めて会った人ともたくさんおしゃべりできて良かった」という反応が返ってきた。

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 他の1期生が活動した吾川郡仁淀川町や幡多郡黒潮町にはキャンドルナイトや特産品の開発など、目に見えやすいテーマがある。一方、是友地区にそうしたものはない。

 実習が始まった当初、ある女子学生が住民に「是友には何がありますか?」と聞いたことがあったという。

 その後、学生たちは地区歩きも行った。古い赤ポストに、地区を見渡せる高台…。住民にとって当たり前になっているものが、学生の目には新鮮に映ったという。学生たちは、地域の人が“お裾分け”のような気持ちで出品している三つの良心市や、防空壕(ごう)跡を生かした、いの町特産ショウガの貯蔵庫などにも着目した。

 「観光資源や産業資源はないけれど、昔からあるものや風景、住んでいる人が、是友の資源ではないか」。そんな声が出ている。

 学生と住民が一緒になって地区の在り方や将来を考える中で、地区は2016年度、地区活動の在り方などを聞く住民意向調査も予定している。

 樋口区長は学生たちについて「自分たちに何ができるか、ということを考えられるようになってきたと思う。質問の内容や、目の色も明らかに変わってきた」と期待する。

 そうした“下地づくり”の半年間を終え、新たな年度が始まる。

 学生が言う。

 「2年生になってからの活動は、地区内とのつながりを強めることと、学生という他者として外からの視点で地域を見ていくことが必要と思う」

森田 ららさん
森田 ららさん
「人が資源」を理解 森田ららさん

 是友地区の区長である樋口さんは、「是友地区は人が地域資源だ」と言います。その言葉の意味とは何なのでしょうか。

 実習で“地区歩き”を行った時のことです。大学生が地区を歩くということを、樋口さんが地区内放送で流してくれたということを出発前に聞きました。そのためなのか、家の前を通り掛かると、わざわざ家の中から出てきて地区の仕組みについてお話ししてくれた人や、畑で育てているポンカンやハッサクなどを「みんなで食べや」と持たせてくれた人がいました。

 私たちは単なる学生で、言ってしまえば授業で是友地区に関わっているだけです。しかし、地区の方々は私たちを温かく受け入れてくれ、自分の孫のように接してくれます。樋口さんが人を地域資源だと断言することの意味を少し理解したような気がしました。

 たった半年関わっただけでしたが、私は心も体も大きく刺激を受けました。

 「もっとここで学びたい!」と強く思った半年間の実習でした。

田村 侑暉さん
田村 侑暉さん
 課題解決へ努力を 田村侑暉さん

 実習はとてもバラエティーに富んでいました。さまざまな位相、角度の実習を体験していく中で、是友地区は「共助」のまちだと感じました。災害などが起きたとき、住民同士が互いに助け合えるような雰囲気が醸成されていたということです。

 このような雰囲気を醸成できている背景として、住民の方々と行ったグラウンドゴルフが共助の関係づくりの立役者になっていると感じました。

 グラウンドゴルフは、ホールポストにボールをインするまでの打数を競う競技であり、別段特別なものはないです。しかし、実際に参加すると、飛び交うヤジやアドバイスの声の他に、近況を互いに報告し合うといった細かいコミュニケーションがありました。それが、住民同士の壁を柔らかくしていることに気づきました。

 実習では是友地区の魅力的なところ、また課題と感じるところも体験・体感しました。今後も区長である樋口さんをはじめ、住民の方々と共に是友地区をより良くしていく方向を考えていきます。


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カテゴリー: 教育大学特集教育


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