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2021.10.02 08:00

【接待で処分】また揺らぐ行政への信頼

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 行政がゆがめられたと疑われては政策全般への信頼が揺らぐ。接待に潜む危うさは認識しているはずだが、なぜ繰り返されるのか。
 デジタル庁は、事務方ナンバー2の赤石浩一デジタル審議官を国家公務員倫理規程に違反したとして懲戒処分にした。内閣官房イノベーション推進室イノベーション総括官だった昨年9~12月に事業者から3回、計約12万円の接待を受けていた。
 処分はしっかりと受け止めて、行動を律していくしかない。是正を期待したいが、処分を巡る一連の対応には釈然としないものがある。
 3回の接待のうち2回は、過去に明らかになった平井卓也デジタル相らとNTT幹部との会食と日付が一致している。このため、同一のものだった可能性が指摘された。
 ところがデジタル庁は当初、平井氏が一部には同席していたと認めたものの、接待の相手方については「非公表」とする対応を取っていた。相手が分からないままでは接待の意図が隠されかねない。
 後日、NTTの澤田純社長は昨年10月と12月に自身が平井氏を接待したことを認め、陳謝した。デジタル庁は平井氏との接触を曖昧にしたかったのだろうが、不誠実な対応だ。透明性を欠く姿勢はかえって疑念を強める。反省を求めたい。
 平井氏はNTTに対する許認可権限を持っていないため、供応接待を禁じた大臣規範には抵触しないと主張している。一方で閣僚給与の一部の自主返納を明らかにした。
 また、参加した3人分の飲食費などは半年以上たってNTT側に支払ったとする。遅れた理由を平井氏は、割り勘にしなければ同席した赤石氏らが倫理規程に抵触しかねないと判断したと説明した。
 しかし、支払いは週刊文春の取材を受けてからだという。事案の発覚後に割り勘にして、割り勘だから問題なしとするのは倫理規程を骨抜きにするようなものではないか。
 赤石氏は、実質的には接待を受けたと判断されて処分された。後日の割り勘は、平井氏の思いは排除され、処分を回避する材料にはならなかったということだ。支払いが処分の軽重に影響したのかは判然としないが、処分に踏み込んだこと自体は評価されていい。しかし、それで決着とはならない。
 接待を巡っては、菅政権下でも総務省や農水省で倫理規程に基づく処分が行われてきた。菅義偉首相の長男が関与する事案もあった。そうした際の「行政がゆがめられた事実は確認できなかった」とする政府側の発言に説得力は乏しい。
 行政の公正性を保つためのルールが簡単に破られていることを重く受け止める必要がある。発足して間もないデジタル庁での処分は問題の根の深さを示し、菅政権のうちに決着をつけたい思惑も透ける。
 官僚のおごり、忖度(そんたく)や隠蔽(いんぺい)が指摘されるのは、安倍政権からの国会軽視や説明責任を回避する姿勢と無関係ではないだろう。新政権はそれらを改める責任がある。

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