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2021.09.24 08:00

【障害児手当】不公平なくす仕組みを

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 20歳未満の障害児がいる家庭に支給される国の「特別児童扶養手当」を巡り、都道府県によって、人口当たりの支給対象児童数などに大きな差があることが分かった。
 支給の可否を決めている都道府県の判定状況にばらつきがあるとみられる。住んでいる地域によって国の手当を受け取れたり、受け取れなかったりする不公平は許されない。審査の仕組みを見直す必要がある。
 同手当は約24万人に支給されている。身体や知的、精神などの障害がある子どもを養育する親らの経済的負担を補う目的がある。
 国が定めた障害の基準や所得制限があり、市町村に申請する必要がある。都道府県の判定医が審査し、支給の可否や等級を決定している。
 共同通信が厚生労働省の2019年度の統計から分析した結果、1万人当たりの支給対象児童数は全国平均で121人(本県は154人)だった。
 地域差が大きく、最多の沖縄県と最少の東京都では5・1倍もの開きがあった。支給対象とする障害の程度に関して、自治体によって説明や対応が異なっている状況が影響している。
 例えば、「療育手帳」の基準で最も軽いレベルの知的障害について、多くの自治体は支給対象に含める対応をしているが、東京都は対象外として門前払いしているとみられる。
 同じ状態の障害でも申請の有無や支給の可否に不公平が生じている。国の制度であり、全国共通の対応が行われてしかるべきだ。
 市町村や都道府県が住民にどのような説明や対応を行っているのか。厚労省は実態を把握し、対策を検討する必要がある。
 審査の方法にも問題があるようだ。現状では、都道府県の判定医が書類だけを見て審査した結果が、そのまま採用されている場合が多いという。
 審査基準が曖昧で、判定の厳しさに個人差もある。障害者団体からは基準の明確化や審査方法の見直しを求める声が上がっている。
 客観性と透明性を高めることが欠かせない。判定医だけでなく、その障害の専門医や生活状況を知る福祉職らも参加させ、複数で審査する仕組みを検討したい。
 同手当では、申請却下も過去10年間で2・8倍に膨らんだ。おおよそ2年ごとの更新時に打ち切られるケースも増えている。
 理由としては、以前は認知度が低かった発達障害の診断が広く行われるようになり、申請が増え、却下される数も多くなっているためとみられる。
 ただ、身体障害などに比べ、発達障害は判定が難しいとされる。同手当に詳しい専門家は、厚労省が定めている現行の診断書の様式では「養育の困難さを適切に評価できていない」と指摘する。
 知能指数(IQ)に偏った審査も見られるという。より総合的な判定が求められている。不公平を感じさせない支給に向けて、審査の在り方を抜本的に見直す時が来ている。

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