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2021.09.20 08:00

【敬老の日】人間のつながりを大切に

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 2020年の日本人の平均寿命は女性が87・74歳、男性が81・64歳となり、ともに過去最高を更新した。
 超高齢化社会を迎えた今、長い老後をどう生きればよいのか。迷っている人たちに支持されているのが今年98歳の作家、佐藤愛子さんのエッセーである。
 最新作で、老後を前向きに過ごすこつを問われた佐藤さんは答える。
 〈べつに老人が前向きに生きなければならないってことはないんじゃないの? それが私がいいたいことである。もっと端的にいうと、「もう前向きもヘッタクレもあるかいな」という台詞(せりふ)だ〉
 老境の先達ならではの痛快さである。国は65歳以上を高齢者としているが、佐藤さんら90代の人から見れば、60~70代は老境の「初心者マーク」と言えるのかもしれない。
 高齢化の裾野が広がり、個人の考え方や家族形態などは多様化している。高齢者といっても、その生活はひとくくりにできない時代を迎えている。
 ただ、誰もがわが事として影響を受けているのが、新型コロナウイルスの感染拡大であろう。
 60歳以上を対象にした内閣府の調査では、コロナ禍によって「別居している家族と会う機会が減った」という人は半数近くに上る。
 お盆や正月に帰省していた子や孫と会えていない。病院や施設にいる家族と面会できない。県内でも切実な声が聞こえてくる。
 調査では「友人・知人や近所付き合いが減った」も半数を超した。
 つながりを補う方法として「メール、電話、オンラインでの連絡が増えた」という回答も目立った。コロナ禍をきっかけにして、スマートフォンなどの情報機器を活用するようになった高齢者は少なくない。
 自粛生活でも心身の健康を維持しようと、オンラインでの習い事や学習に挑戦する人も増えている。
 体を動かすフィットネス、語学、楽器、料理教室…。動画投稿サイト「ユーチューブ」などでは、あらゆる分野の講座が見つけられる。
 発信する側に回る高齢者も現れている。本紙でも、高知市の70代女性が農作業のこつを伝える動画「ひろちゃん農園」が人気と報じられた。
 高齢者層は情報機器に拒否感も強いとされる。ただ、活用次第では刺激ややりがいの源となり、新しい世界が広がることも知っておきたい。
 老後が長くなれば、家族以外の人間関係も重要になるだろう。
 しかし、日米独スウェーデンの4カ国調査によると、日本では家族以外で相談や世話をしたり、されたりする「親しい友人がいない」高齢者が3割以上と断トツの多さだった。
 誰もが心豊かな老後を送りたい。地域の超高齢化を迎え、友人や近所の人と話し合いたい課題は多いはずだ。例えば、災害時の避難や運転免許返納後の移動をどうするか。
 きょうは敬老の日。「元気かえ」「ごとごとやりゆうよ」―。県内でそんな声掛けをし合えるような、人間同士の付き合いを大切にしたい。

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