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2021.09.19 08:00

【原発再稼働】「依存度低減」を忘れるな

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 原子力規制委員会は、中国電力島根原発2号機(松江市)の安全対策が新規制基準に適合していると判断した。中国電は島根県などに再稼働への同意を要請した。地震や津波などを想定した安全対策工事は本年度内に完了させる方針という。県などの動向が焦点となる。
 全国で唯一、県庁所在地にある原発であり、事故時の住民避難は大きな課題となる。避難計画の策定対象である原発の30キロ圏内には島根、鳥取の2県6市が入り、人口は46万人に達する。
 30キロ圏に約94万人が居住する日本原子力発電東海第2原発を巡り、水戸地裁は実現可能な避難計画や十分な防災体制にはほど遠いと指摘し、運転を認めない判決を出している。建物の耐震性に問題はないとしつつ、住民の安全対策は避けられないとの判断を示した。
 2013年に新規制基準が施行されてから16原発27基が審査を申請し、今回を含め10原発17基が合格した。しかし、これまでに再稼働したのはいずれも加圧水型の10基で、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型は合格しても再稼働は進んでいない。
 国の中長期的な政策指針である「エネルギー基本計画」の改定素案は、福島第1原発事故を受けて、原子力は可能な限り依存度を低減するとの表現を維持する。その一方で、安全性確保を前提に「必要な規模を持続的に活用する」と、原発再稼働を進める姿勢を示している。
 30年度の電源構成目標には、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底する方針を掲げた。それに伴い火力は大幅に縮小するが、原子力は2割程度の現行目標を維持する構えで、推進の立場を変えていない。
 改正地球温暖化対策推進法は、50年までに脱炭素化社会を実現することを明記した。温室効果ガス排出量を30年度には13年度比で46%削減することを打ち出している。
 意欲的な温室ガス削減目標は歓迎される。そのためにはエネルギー分野の取り組みが重要となる。政府が掲げる目標を達成するのは簡単ではないが、再生エネ拡大の道を探っていくことが重要となる。
 原子力の目標達成には30基程度の再稼働が必要とされる。しかし、各地の原発で断層を巡る議論が論点となり、慎重に審査されている。地元同意を得ても、防潮堤などの安全対策工事に時間がかかる。
 また、東電柏崎刈羽6、7号機は、テロ対策など核物質防護不備が判明して、規制委から事実上の運転禁止を命じられた。原電敦賀2号機では、審査資料を不適切に書き換えたことで審査を中断した。驚くほど甘い安全性への認識が不信を強めている。
 原発の新増設や建て替えは打ち出せず、運転期間40年ルールを形骸化させても将来像は描きにくい。経済産業省は、最も安いとされた原子力の発電コスト上昇を試算している。転換点にあることを受け止めながら、今後の在り方を考えたい。

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