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2021.09.18 08:00

【北朝鮮ミサイル】冷静な分析で対話再開を

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 北朝鮮が日本海に向け弾道ミサイル2発を発射した。政府によると日本の排他的経済水域(EEZ)に落下したとみられる。
 幸い、航空機や船舶への被害はなかったものの、国連安全保障理事会の決議に対する明らかな違反で、到底容認することはできない。
 これに先立ち新型の長距離巡航ミサイルの発射も報じられた。米国などが非核化に向けた対話を呼び掛ける中での挑発行為に手詰まり感が漂う。軍事力の誇示にどんなメッセージを込めたのか。冷静に分析し、対話再開への道筋を探りたい。
 一連のミサイル発射で、北朝鮮の技術開発が着実に進んでいることは間違いない。
 巡航ミサイルは北朝鮮領空で「8の字」形を描き、約1500キロ飛んで目標に命中したという。事実であれば日本の大半が射程に入る。ただ巡航ミサイルは安保理決議の対象ではなく、国際社会に一定配慮したとの見方もあった。
 しかし、その対応を話し合う日米韓会合の翌日、安保理決議違反の弾道ミサイルを発射し、さらなる挑発に出た。
 変則的な軌道で迎撃をかわす短距離弾とみられる。問題は政府が発射を察知できていなかったり、EEZ内に落下したのかどうか軌道の分析に手間取ったりしたことだろう。多様なミサイル技術で脅威が増しているのは否めまい。
 だが、軍事的挑発に軍事的圧力で応じるのは得策とはいいがたい。
 8月に行われた米韓合同軍事演習に北朝鮮は強く反発し、対抗措置を警告していた。一連のミサイル発射はその一環だろう。弾道ミサイル発射と同じ日の韓国による潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射実験にタイミングを合わせた可能性も指摘されている。
 お互いの挑発がエスカレートすれば必然的に地域の緊張感は高まり、際限のない軍拡へとつながりかねない。冷静な対応が求められる。
 北朝鮮は、トランプ前政権との非核化交渉が決裂して以降、バイデン政権による対話の呼び掛けにも応じていない。昨年1月末からは新型コロナウイルス対策で国境を封鎖し続け、孤立の度を深めている。
 長引く国際社会の制裁や水害もあって食料や電気、医薬品などの不足を国内外に認めざるを得ない状況に陥っている。いつまでも自国の殻に閉じこもっているわけにはいかないだろう。ミサイル発射による挑発も交渉のカードづくりに見えなくもない。
 弾道ミサイル発射を受けて安保理は緊急会合を開いたものの、一致した対応は出せなかった。安保理の機能不全が指摘される中では、日米韓の連携がより重要になる。
 日韓関係は慰安婦や徴用工の問題で悪化し、対北朝鮮の立ち位置に違いもあるが、非核化を目指す方向性は同じだ。あらゆる方法を用いて関与を続ける必要がある。日本には拉致問題もある。独自の交渉ルート確保を急ぎ、働き掛けを強めたい。

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