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2021.09.17 08:00

【自民総裁選】「負の遺産」総括も怠るな

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 自民党総裁選がきょう告示される。岸田文雄前政調会長、河野太郎行政改革担当相、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行が立候補を表明している。
 1年前の総裁選は、当時の安倍晋三首相の辞任を受けて行われた。官房長官だった菅義偉首相が早々に多くの派閥の支持を取り付け、優位が動かなくなったことで本格的な政策論争には至らなかった。さらに、政治空白を避けるとの理由で簡略型での実施となった。
 今回は党員・党友による投票を含む完全型で行われる。議員の投票行動だけでなく、地方票の行方にも関心が向けられる。菅政権1年をどう評価し、今後をどう描くのか。それぞれの政策をぶつけ合う機会であり、有意義な論戦を期待したい。
 新型コロナウイルス緊急事態宣言が19都道府県に出される中での総裁選となる。首相はコロナ対策に専念したいとして出馬を断念した。
 言うまでもなく、菅政権の総括は欠かせず、そこでは一連のコロナ対策は重要な論点となる。感染抑止への取り組みや医療提供体制の整備は遅れ、経済活動との両立も実現できてはいない。どう立て直すのかは避けられない課題だ。
 安倍政権から引き継いだ「負の遺産」の解消にも前向きではなかった。「政治とカネ」問題は今も尾を引いている。森友学園や加計学園、桜を見る会、参院選広島選挙区の選挙資金問題などは曖昧にされたままだ。党に所属していた議員が有罪の司法判断を受けた事例もある。
 臨時国会の召集を見送ってきた姿勢が示すように、国会や説明責任との向き合い方も問われてきた。日本学術会議の会員候補の任命拒否は、人事を理由に説明を拒み、東京五輪には「安全安心」を繰り返した。
 立候補予定者はこれらと向き合う必要がある。前哨戦では、安全保障や経済対策で独自色を出そうとする一方で、持論を封印する動きも見られた。森友学園問題を巡る財務省の決裁文書改ざんでは、再調査の必要性は否定されている。党内で依然として影響力を持つ安倍前首相への配慮がうかがえる。忖度(そんたく)が続くようでは政治の信頼に影響する。
 前回総裁選では、二階俊博幹事長が菅氏支持を表明して他派閥が追随する流れをつくり、その後の存在感につなげた。今回は岸田氏が党幹部の任期制限を打ち出したことが、二階氏に反発する勢力を刺激した。党内の動揺は首相の出馬断念や選挙構図の流動化を導いた。
 そうした中には、投票行動を派閥が拘束する慣行をやめるように求める中堅、若手議員からの要請もある。衆院選を控えて自らの選挙を有利にしたい思惑があり、また選挙後の人事も絡むが、派閥の支援先一本化は見送りが強まっている。
 独自の判断が優先されることが議論の活発化を呼び込み、党内力学を変える可能性がある。菅政権にとどまらず、安倍政権からの約9年の総括を通して新たなビジョンを提示する。そこから党刷新が始まる。

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