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2021.09.14 08:00

【行動制限の緩和】前のめり姿勢では危うい

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  新型コロナウイルスと共存しながら経済活動を本格化させるため、緊急事態宣言下でも行動制限を緩和する基本方針を政府が決めた。希望者へのワクチン接種が完了する11月ごろからの実施を見込む。
 高知県は12日でまん延防止等重点措置が解除されたが、対象県は依然残る。宣言は19都道府県で延長に入った。新規感染者は減少傾向にあるとはいえ収束を見込める段階にはない。再拡大への警戒は怠れず、専門家には時期尚早の指摘がある。
 政府は、本格的な緩和までに実証実験を行いながら運用面の課題を探るという。医療提供体制との兼ね合いなど幅広い検討が不可欠だ。
 コロナ対策への専念を菅義偉首相は退陣理由に挙げた。実績とするには万全の対応を取ることだ。緩和への動きが誤ったメッセージとならないよう慎重な姿勢が求められる。
 制限緩和には、ワクチンの2回接種が完了した接種済証か、PCR検査などの陰性証明の提示を条件とする。宣言下でも都道府県をまたぐ旅行や大規模イベント開催を認め、飲食店の酒類提供も容認する。
 ワクチンの接種により、高齢者の感染者や死者が抑えられていると分析される。接種の拡大で、感染者が増えても医療逼迫(ひっぱく)は起きにくいと判断したようだ。首相は、医療体制を確保して治療薬とワクチンで重症化を防ぎ、社会経済活動と両立する考えを示している。
 コロナ禍で自粛や営業制限が長引く。日常生活や経済活動の回復を探らないといけない。将来的に行動規制が緩められると分かっていれば、今の規制への理解が深まり感染防止につながるという見方もある。
 ただ、狙い通りに感染が抑えられるかは分からない。「出口戦略」を強調しすぎて期待が先走ると、感染が再び拡大する恐れがある。
 全国知事会は、国民的議論を求める一方、「緩和のみが目立ち、国民を楽観させることは不適切だ」と懸念を示した。秋の行楽シーズンの県境をまたぐ旅行や移動の原則中止、延期を求めたのも、今の感染状況からの判断だろう。
 緊急事態宣言を解除する新たな基準は、医療提供体制や保健所の負荷を重視するようにした。重症者や自宅療養の増加にとどまらず、コロナ対応で、他の病気の治療に当たれない事態も起きてきた。これまでより実情に即した基準なのだろう。
 それに従えば、解除できないのは病床などが厳しい状況にあることを意味する。それなのに、宣言下でも行動制限を緩和するというのは理解しにくい。
 政府は、新たな変異株の流行などで感染が急拡大した際は強い行動制限を機動的に行うとする。「第5波」は感染力が強いデルタ株が一因となった。後手に回ってきた対応の検証と反省がなければ、同じことを繰り返しかねない。
 接種の証明や確認方法も課題とされる。これらを多面的に検討することが、感染防止の対策と社会経済活動の両立に近づく方策だろう。

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